2017年6月6日のブックマーク (3件)

  • エイモス・チュツオーラ「ブッシュ・オブ・ゴースト」 翻訳:橋本福夫 - 本棚のすき間でつかまえて

    エイモス・チュツオーラ(1920-1997)はナイジェリアの作家であり、代表作「やり酒飲み」はアフリカ的マジックリアリズムとして世界各国で読まれている小説。今作「ブッシュ・オブ・ゴースト」は「やし酒飲み」の次に書かれた作品であり、アメリカのロックバンド「トーキング・ヘッズ」が今作品に感銘を受けて同じタイトルのCDアルバム「ブッシュ・オブ・ゴースト」を作っている、ということで知られている(僕はよく解らないんだけど、とりあえず影響力があったということを伝えたい)。今作は1990年代にちくま文庫で発刊されたものの、今は絶版。チュツオーラ作で一番有名な「やし酒飲み」は岩波文庫で発刊されているので気になる方はそこから入るのがいいのではないだろうか。 さて今作、冒頭が秀逸。遠くで銃声が聞こえたときに7歳の少年と兄はその音が面白くて踊りだしてしまう。しかし音が近くまで来た時になって、これはおかしいと気が

    エイモス・チュツオーラ「ブッシュ・オブ・ゴースト」 翻訳:橋本福夫 - 本棚のすき間でつかまえて
  • 捨て鉢の飛翔―ナサニエル・ウエスト『いなごの日 / クール・ミリオン―ナサニエル・ウエスト傑作選―』 - 言葉でできた夢をみた。

    今回紹介するはこちら。 ナサニエル・ウエスト 著、柴田元幸 訳『いなごの日 / クール・ミリオン―ナサニエル・ウエスト傑作選―』(新潮社、2017年) いなごの日/クール・ミリオン: ナサニエル・ウエスト傑作選 (新潮文庫) 作者: ナサニエルウエスト,Nathanael West,柴田元幸 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/04/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 1930年代にアメリカで活動したナサニエル・ウエスト。あまり有名な作家というわけではなく、大戦後アメリカのブラックユーモア文学ブームの際に再評価されるまで長らく過小評価されていたらしい。私も今回初めて手に取った。主な作品に『バルソー・スネルの夢の生』『孤独な娘』『クール・ミリオン』『いなごの日』などがある。 今回紹介するにおさめられている作品は「いなごの日」「クール・ミリオン」と短篇の「ペテン

    捨て鉢の飛翔―ナサニエル・ウエスト『いなごの日 / クール・ミリオン―ナサニエル・ウエスト傑作選―』 - 言葉でできた夢をみた。
  • 「罪悪」に就いて - サラダ坊主日記

    何が悪なのか、何が罪なのか、その定義を厳密に見極めようと試みても、視界は一向に晴れようとしない。罪悪という言葉自体は充分に歴史的な手垢に塗れているように見えるが、その内訳は極めて多様で、様々な社会的条件に四方八方から制約されている。つまり、誰にとっても絶対的な「悪」であると認められ得る事案というものは、存在しないのだ。殺人や強姦や窃盗や放火や、そういった陰惨で人間性の「中核」を毀損するような行為さえ、それを殊更に好んで手を染めようと企てる人々が少なからず存在するという事実は、私の心を慄然とさせる。 例えば怨恨や情痴が殺害の理由ならば、未だ私の精神は辛うじて救われるのかも知れない。恨みに基づいて人を殺すという行為自体は嘔気を催すほど陰惨だが、そこには人間の感情に深く結び付いた「物語」の効果が介入している。その物語の効果が、良くも悪くも「感情移入」や「共感」の働きが関与してくることを許容するの

    「罪悪」に就いて - サラダ坊主日記