世の中、多数決など投票で物事を決めることは多いが、様々な投票がどういう癖を持つのか、詳しく考えた事のある人は少ないと思う。しかし、経済学の中には社会選択論と言う分野があり、そういう事を延々と考えている研究者がいる。ネット界隈の経済学徒の間で話題の新書、慶應大学の坂井豊貴氏の「多数決を疑う」は、一般向けに社会選択論の知見を紹介しつつ、さりげなく著者の政治観を世に問う意欲作で、民主主義云々と語りたい人にはお勧めできる一冊である。しかし、疑って読むべきところも多少あった。 1. 本書の概要 単純多数決だけが投票ではなく、決選投票を行う制度にしたり、選択肢に点数をつけるて合計するものなど種類がある。様々な意見の集約ルールがあるわけだが、方式が違えば結果も違ってくる。マルケヴィッチの反例を見ると、代表的な五つの集約ルール全てが違う結果を出す。どの集約ルールを選ぶべきなのであろうか。ルールによって、コ