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ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (18)

  • Shirakawa(2023)対白川(2002) - himaginary’s diary

    IMFの白川論文が話題になったが、小生から見ておかしいと思われる点をまとめておく。 日の2000-2012年の生産年齢人口当たりの成長率がG7の中で最も高いことをゼロ金利制約の無効性の根拠としているが、12年前の拙エントリで示したように、その期間の生産年齢人口当たりの成長率は、リーマン・ショックの影響もあり、期間の取り方によって簡単に国別の大小がひっくり返るので、分析や議論の根拠に使うのは不適切。 同期間の需給ギャップを見ると、内閣府の計算でも日銀の計算でも概ねマイナスであった時期であり、需要が供給に比べて不足していた。その期間に確かに実質GDPは2000年度の485.6兆円から2012年度の517.9兆円に6.7%増加しているが、一方で名目GDPは537.6兆円から499.4兆円に7.1%減少している。即ちGDPデフレータの1割以上の低下が生じていたのであり、需給ギャップのマイナス傾向

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    tuisumi
    tuisumi 2023/03/06
  • マンキューの罠に落ちたクルーグマン? - himaginary’s diary

    昨日クルーグマンのマンキュー論説批判を取り上げたが、クルーグマンより前にEconospeakでピーター・ドーマンが同論説を痛烈に批判している。 以下はドーマンによるマンキュー論説のまとめ。 “Debunking” Piketty, Mankiw says that rich people save because they are altruistic toward their unfortunate kids, who, because of regression to the mean, won’t be as financially successful as they are. But the unintended consequence of all this saving is that the capital-labor ratio changes, and the prin

    マンキューの罠に落ちたクルーグマン? - himaginary’s diary
  • ドラギが明らかにした欧州危機の主因 - himaginary’s diary

    Social Europe Journalという電子ジャーナルで、アンドリュー・ワット(Andrew Watt)*1が3/14のEUサミットにおけるドラギ講演の問題点を指摘している(H/T Economist's View)。 それによると、ドラギはグラフを用いて以下の点を示したという: 経常黒字国(オーストリア、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ)における生産性の伸び率は経常赤字国(フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)よりも高い。 しかし、賃金の上昇率は後者の方が大きい。 構造改革と賃金の抑制は成功をもたらす。硬直化した構造と貪欲な労働組合は失敗をもたらす。 フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングによると、この講演を聞いていたオランド仏大統領は、財政緊縮策に反対し成長刺激策を求めていたにも関わらず、欧州(ないしその一部の国)の問題点を示す明白

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  • 何が潜在GDPの低下をもたらすのか? - himaginary’s diary

    最近、潜在GDPが低下したのではないか、というジェームズ・ブラード・セントルイス連銀総裁がシカゴ講演で提示した仮説を巡ってブロゴスフィアで侃々諤々の議論が交わされた。 一つの論点は、潜在GDPをどのように計測するか、ということであった。以前ここで紹介したように、従来から用いられてきたトレンド分解や生産関数アプローチのほか、DSGEモデルを利用した自然率の推定という手法も近年では登場しており、ブラードはそちらの手法を念頭に置いて議論を提起したようである*1。 しかし、そうした推計手法の議論は得てして神学論争に陥りやすい*2。そこで、ここではその問題は脇に置いておいて、もし潜在GDPが低下したとしたらどのような理由によるものだろうか、という切り口で議論の俯瞰を試みてみる。以下では考えられる原因を列挙し、併せてそれに関連する各論者のエントリにリンクしてみる。 逆資産効果により潜在GDPが低下した

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  • 貧しい少女が妊娠するのは合理的な行動 - himaginary’s diary

    2/3エントリではカール・スミスとブライアン・カプランのdeserving poorを巡る討論に纏わる話題を紹介したが、そのカール・スミスが昨年末のブログで表題のような主張を行っていた(H/T ターラー・コーエン) その理由は以下の通り。 16歳で避妊をせずに定期的に性交渉を行えば、ほぼ確実に妊娠する。出産で死亡する可能性は低く、その年齢ならば後期流産の可能性も低い。 子供を持つことが人生最大の喜びであることは多くの人が認めるところである。 それに対し、一般に推奨される進路、即ち刻苦勉励して学歴を取得することは、一種のギャンブルである、とスミスは言う。というのは、そのように社会の階段を上がることと引き換えに出産時期を遅らせることには、結局子供を持てなくなるリスクが存在するほか、時間割引率をも伴うからである。 ちなみにスミス自身は貧しい黒人の少年だったが、そのギャンブルに勝ったことを自認して

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  • 地産地消は環境に良くない - himaginary’s diary

    とEd Glaeserがボストングローブに書いている(原題は「The locavore’s dilemma」;Economist's View経由)。 その理由は以下の通り。 2008年のカーネギーメロン大学の2人の研究者の調査によると、米国産の物の消費は一家計当たり年間8.9トンのCO2に相当する温室効果ガスを生み出す。そのうち物の配送から生み出されるのは0.4トンである。また、農作物の供給網上の輸送から生み出されるものの総計は一家計当たり年間1トンである。 我々は、配送を縮減することによる環境へのベネフィットと、物を必ずしも最適ではない栽培地で生育することによる環境へのコストを比較衡量する必要がある。例: 最近の英国での調査によると、英国産のトマトの消費はスペイン産のトマトの消費の約3倍の温室効果ガスを生み出すという。寒い英国でトマトを生育することによって費やされる余分なエネルギ

    地産地消は環境に良くない - himaginary’s diary
  • コアインフレ率なんかいらない? - himaginary’s diary

    とジェームズ・ブラード・セントルイス連銀総裁が主張している。直近では5/18にNYUで「Measuring Inflation: The Core Is Rotten」と題した講演を行っている。その講演内容は、日語ではロイターが報じたほか、こちらのブログで要約がなされている。 そこでブラードは、中央銀行がコアインフレ率ではなくヘッドラインインフレ率(総合インフレ率)を目標として使うことを推奨している。彼がコアインフレ率に否定的なのは、通常コアインフレ率の長所とされている以下の点が実はそうではないから、とのことである: ボラティリティが低い ボラティリティを低めた結果、コアインフレ率のノイズ的な小さな動きを強調して金融政策に結び付けてしまう結果になるのではないか。 ボラティリティを低めるのは、単に一部の価格を対象外としてしまうのではなく、計算方法を工夫することによっても達成できる。 コアイ

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  • リカードの中立命題を巡る紛糾 - himaginary’s diary

    最近、欧米の経済ブロゴスフィアで、時ならぬリカードの中立命題を巡る論争が巻き起こった。 きっかけは、世銀チーフエコノミスト兼上級副総裁Justin Yifu Lin(林毅夫)が「Beyond Keynesianism and the New Normal」と題された小論で、穴を掘って埋めるようなケインズ政策ではリカードの中立命題の罠に陥ってしまうので、いかに将来の生産性を高めるような財政政策を実施するかが大事、と説いたことにある*1。 そして… そのLin論文にAntoinio Fatásが噛み付き、 そのFatásの批判にEconospeakのpglが賛同し、 それをEconomist's ViewでMark Thomaが取り上げ、 そのエントリを読んだクルーグマンが以前のブログエントリを持ち出してLinを揶揄し、 それを受けてNick RoweがLinを弁護し、 それに対してクルーグマ

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  • 右派系経済学者がよくやる間違い - himaginary’s diary

    昨日紹介した左派系経済学者のよくやる間違いと対の形で、タイラー・コーエンが右派系経済学者のよくやる間違いを提示している。以下はその拙訳。 現在の経済環境において、過度のインフレないしハイパーインフレへの恐れを抱いている。また、2〜5%のインフレのコストをしばしば過度に評価している。 経済成長の源泉と駆動要因について我々が知っていることは、認めたくないほど少ない。この問題について追求を受けると、東独対西独のような、極端な差異が生じた比較的単純なケースの引用に頼ってしまう。 税率の引き下げは言われているほど経済発展を促さない。少なくとも、租税負担率が「GDPの50%ないしそれ以下」の範囲においては。 温暖化問題には、その大部分が経済学上の問題ではないにしても、言及しないことが怠慢に映るような経済関連の問題が数多く存在する。 医療貯蓄口座は個人的には大賛成だが、シンガポール並みの規模で実施され、

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  • 左派系経済学者がよくやる間違い - himaginary’s diary

    昨日のエントリへのokemosさんのブクマで教えてもらったが、ケビン・ドラムが、タイラー・コーエンの挙げた左派系経済学者のよくやる間違い14項目に逐一突っ込みを入れている。ちなみにケビン自身は左派系と自認している(ただし経済について論じることはあるが経済学者ではない、とも断っている)。 以下はその拙訳(連番の付いた段落が元のコーエンの文章で、その下のインデントされたブレット・ポイント付きの段落がドラムの突っ込み)。 査読付き論文で示された実証結果を遥かに超える水準で貨幣が政治において意味を持つ、と述べる。 査読付き論文で示された実証結果が間違っているのではないか。それらでは貨幣の力学が政治に持つ意味をすべて捉えきれていない。 政府支出を個々の計画というベースで評価し、財政全体を一連の統合勘定として捉えようとしない。「社会保障」という名の下で別口の評価を行ったり、あるいは別口の評価で裁量的支

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  • バロー対バロー - himaginary’s diary

    昨日のエントリで紹介したサージェントのインタビューの中に、手厚い失業手当てが却って高失業率をもたらす、という趣旨の発言があった。 先月30日に、バローが現在の米国の高失業率について同趣旨のWSJ論説を書いたところ、各所から批判を浴びた。左派系の人々から批判されるのは予想の範囲内だが、今回はMarginal Revolutionのアレックス・タバロックやEconlogのアーノルド・クリングも批判の戦列に加わった。中でもタバロックは、あろうことかバローの息子のジョシュ・バローの論説を持ち出してきて、息子の方に軍配を上げている。 マンキューは例によってバローの論説にリンクを張るだけに留まっているが、Economist's Viewが関連各記事を紹介しているので、以下ではそれに沿って各人の反応を簡単にまとめてみる。 ロバート・ライシュ 大部分の州で提供される失業手当は、被給付者が失業したことで失っ

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  • コント:ポール君とグレッグ君(2010年第6弾)・ブラッド君の反応 - himaginary’s diary

    昨日紹介したマンキューのクルーグマン批判の前半部分に対し、当のクルーグマンではなくデロングから反論があった。そこでデロングは、将来の増税の悪影響が限られたものになることを簡単な数値計算で示し、マンキューがこの次に何か書く時には、まず封筒の裏で計算をしてみることだね、誰かそのための封筒をマンキューにあげてくれ、と皮肉っている。 デロングが計算した将来の増税の悪影響は以下の3点。 将来の増税による追加的な超過負担 デロングはこれを1ドルの増税につき0.25〜0.50ドルと見積もっている。仮に0.50ドルとすると、結局、1ドルの公共投資は現在価値にして1.50ドルの負担を生むことになる。これを長期に亘って分割して負担するものとすると、毎年0.05ドルの負担ということになる*1。 デロングは、この0.05ドルの負担のうち、1/3が生産性の低下、2/3が徴収される税額の増加という形で実現する、として

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  • 日本の比較劣位産業? - himaginary’s diary

    イースタリーが面白いことを書いているので、以下に訳してみる(Economist's View経由)。 経済学は国は専門に特化せよという…経済学への特化を含めて (Economics tells countries to specialize…including specializing in economics) 経済学で最も権威があり、かつ、私見によれば最も強力な富の創造をもたらす概念は、専門への特化による利得ならびに交易による利得を説く比較優位の考え方だ。周知の通り、国によって得意分野は異なる。スイスはチョコレートを提供してくれるし、ドイツはビール、フランスはワイン、そして英国は…ええと、英国は…、ええと、ええと…。 ああ、そうだ、そもそも英国こそ、比較優位と専門への特化や交易による利得という概念を提供してくれた国だった! こうしたことを考え付いたのは、将来の経済学博士を目指す学生に対

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  • 七人のエコノミスト侍…(違 - himaginary’s diary

    と題したエントリ*1で、デロングがシカゴ派の7人衆の論説を引用した上で撫で斬りにしている。 以下はその拙訳。 セントルイスのワシントン大学のデビッド・K・レビン 貴君(ポール・クルーグマン)に過去四半世紀の経済学の発展を教え込むのは至難の業だ。ジョン・コクランが、財政刺激について我々がその間に学んだことを貴君に教育しようとしたことを私は知っている*2。 しかし財政刺激策? どうしてもっと必要だなんて言えるのだ? 財政刺激のカネの大部分が経済に入る前に景気が回復しているというのに。――それは必要がないという証拠ではないか? どうして自分のその政策への支持が正しいことが証明されたような書き方ができるのだ? シカゴ大学のジョン・コクラン [財政支出が景気を刺激すると言う話は]1960年代以降は院生に教えられたことはない。それらは誤りが証明されたおとぎ話なのだ。ストレスの掛かった時に子供時代に聞い

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  • 条件付き確率破れたり - himaginary’s diary

    コロンビア大学の統計学者のアンドリュー・ゲルマンが、直近の9/12ブログエントリで、二重スリット実験と条件付き確率の関係を論じている(Economist's View経由)。 具体的には、以下のように量子力学の二重スリット実験を描写し、そこでは条件付き確率の法則が成り立たないことを示している。 yが光子の到達するスクリーン上の座標として スリット1を開け、スリット2を閉じている場合に得られる分布をp1(y)とする。 スリット1を閉じ、スリット2を開けている場合に得られる分布をp2(y)とする。 両方のスリットを開けている場合に得られる分布をp3(y)とする。 3番目の実験をスリットに検出器を付けて実行する。その時、個々の光子がどちらのスリットを通過したか分かる。スリットxを通過したものとすると(x=1もしくは2)、きちんとスリットの対称性が保たれていれば、Pr(x=1) = Pr(x=2)

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  • 景気対策と戦争との違い - himaginary’s diary

    康志氏が政府債務の対GDP比の長期グラフをもとに、近年の景気対策を戦争になぞらえるエントリを書いた(池田信夫氏も引用している)。 そこではデータソースも言及されているので、取りあえずインターネットで入手できるものを小生も掻き集め、同様のグラフを描いてみた(データの詳細は後述参照)。 これを見ると、現在の債務残高比率は、第二次世界大戦末期の200%近い水準に近づいている。岩氏は、このことから、第一次石油危機以降の景気対策を戦争に喩えた。 しかし、ここで注意すべきは、債務残高そのものではなく、その国民所得に対する比率を見ている点である。比率である以上、分子の債務残高だけでなく、分母の国民所得の動向も、当然その数値を大きく左右する。 そこで、内訳を見るため、同比率の各年の変化(対数変化率、%)を、分母の国民所得の変化と、分子の債務残高の変化に分解してみた。 (参考のため、債務残高比率も水色

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  • 最低賃金引き上げは失業率を上昇させるか? - himaginary’s diary

    民主党の最低賃金を1000円に引き上げる構想が波紋を呼んでいる。 論壇では、山崎元氏が、民主党の政策は大幅な失業増を招くとして批判的である。この山崎氏の批判についてはすなふきん氏も大いに同意している。 一方、EU労働法政策雑記帳の濱口桂一郎氏は、一気に1000円に持っていくのは無理と断りつつも、その方向性に基的に賛意を表し、山崎氏の見解に反対の姿勢を見せている。また、勝間和代氏は、今年初めの毎日新聞HP上の「クロストーク」で既に同様の提案をしている。 こうした最低賃金の経済学的論点については、「日労働研究雑誌」での大竹文雄氏と橘木俊詔氏の対談において網羅的にまとめられている。そのほかの参考になるサーベイとしては、日総研のレポート、青学の金俊佑氏の卒業論文、高崎経済大学論集の石井久子氏の論文をネットで読むことができる。 純粋に経済理論的な立場から言うと、マンキューが2006/12/2

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  • クルーグマンへの公開書簡 - himaginary’s diary

    スコット・サムナーというベントレー大学経済学部教授がブログ上で出したクルーグマンへの公開書簡が話題になっている。内容は、なぜリフレ政策を支持しないのか、というもの。タイラー・コーエンが絶賛しているほか、Econlogのアーノルド・クリングも紹介している。 サムナーはリフレ政策(ただしリフレという言葉自体は使っていない)を推し進めるべき理由として、以下の6つの点を挙げている。 歴史的経験 ルーズベルトの時代に金位制を離れることによりデフレをインフレに転じた実例がある。 改革が容易 量的金融緩和の前に、まず準備預金への付利をやめるべき。それは簡単にできる。あるいは一歩進めて、超過準備預金へのペナルティ金利を課しても良いのではないか*1。 量的金融緩和 皆が思っているほど手段が限られているわけではない。歴史上の有名な流動性の罠の2つの例、すなわち1930年代の米国と最近の日においては、前者は

    クルーグマンへの公開書簡 - himaginary’s diary
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