昨年、生誕150年を迎えた徳富蘇峰が、国際政治における宣伝の重要性に気づいたのは、第一次大戦前夜のころだった。当時ドイツから自国の優秀さを強調する、英文のパンフレットがやたらと送られてきていた。バカバカしいと思いながら読んでいるうちに、だんだんその気になっていったそうだ。さらに、宣伝が得意なのは、中国だとも指摘している(『稀代のジャーナリスト 徳富蘇峰』藤原書店)。 ▼まさに慧眼(けいがん)である。中国の習近平国家主席が、訪問先のドイツで対日批判の講演を行った。日中戦争では3500万以上の死傷者が出て、南京事件では、旧日本軍が30万人以上を殺害したというのだ。 ▼死傷者数は、中国政府によってこれまで根拠のないまま水増しが続いてきた。「3500万」は、1995年に江沢民元国家主席が、モスクワで行った演説で言い出した数字だ。30万人殺害についても、当時人口が20万人だった南京では、あり得ない。