赤ちゃんを抱えて欧州に 杉並区長の岸本聡子に注目したのは、彼女の2つの著作からでもあった。 『水道、再び公営化!ー欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(集英社新書、2020年3月)では、サッチャーの新自由主義路線以降水道等を民営化したものの私企業の杜撰な管理や財務の失敗により再び公営化の道を歩み始めた欧州の試行錯誤を活写し、『私がつかんだコモンと民主主義』(晶文社、2022年7月)では、彼女が欧州のNGOで働き、マイノリティとしての疎外を感じながら、人類共有資産であるコモンズ(公共財、公共サービス)の重要性を突き詰め、下からの民主主義を体得してきた、その闘いの足跡が描かれている。 ほぼ裸一貫で、しかも赤ちゃんを抱えて欧州に渡り、多言語、多民族社会の中で埋没しかけながら苦闘を重ね、ただ、「気候正義(climate justice)」という学生時代に学んだ自らの思想を抱き続けて生きることによって