■「国家と資本に対抗」も人間の本性 著者は人類学者であり、アナキストの活動家である。人類学とアナキズムの結びつきは唐突ではない。「未開社会」を対象としてきた人類学者モース、クラストル、サーリンズらは、そこに国家と資本主義に対抗する社会を見た、広義のアナキストであった。しかし、今日の人類学者はそのことに注目しないし、アナキストも人類学に注目しない。これらの結合の意味を確かめながら考え且(か)つ行動して来たのは、おそらく著者だけであろう。 研究に専念していた著者は、1999年シアトルでの反グローバリゼーションの闘争を見て、初めて活動に参加したという。だが、そのとき彼が気づいたのは、ニューヨークの「直接行動ネットワーク(DAN)」の会合のやり方が、かつてフィールドワークのために2年過ごしたマダガスカル高地の共同体における評議会とよく似たものだということであった。 これを読んで私は、ハンナ・アーレ