この10数年ほどの間に、人々を組織化する論理が「軍隊の論理」から「不安の論理」へと転換している。 軍隊の論理というのは、ルールを徹底させ、厳しい訓練を施し、組織とそのリーダーに対する忠誠を誓わせるというものであり、少し前までの日本型企業社会はまさにこの論理で組織化されていた。 最近はそうではなく、人々を不安に陥れる環境を整備すればいい、という手法が主流になった。つまり、少しでも気を緩めると会社が潰れる、簡単に首になる、そして首になったらたちまち生活が成り立たなくなってしまう、という状態に人々を追い込む。こうした不安を最大限利用して、経営者(もちろん彼自身も不安のただ中にある)は有無を言わさずどんな理不尽な要求でも社員に平気で要求することができる。 軍隊の論理では職場外の付き合いによる団結と忠誠心の強化が奨励されたが、不安の論理ではむしろそれを否定する。いざとなっても誰も助けてくれないという