解体工事の開始は7月に迫る。土壇場の大逆転はなるか。 「防潮堤と同じことが行われている。住民が何も知らされていない」 建築家の伊東豊雄氏が語気を強めた。東北の防潮堤と比較したのは、東京の真ん中に造られようとしている新国立競技場だ。その大規模な建て替え計画に対し、現施設を最大限残して改修する代替案を5月12日、市民グループ主催のシンポジウムに合わせて伊東氏自らが発表した。 伊東氏は建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を昨年に受賞。「せんだいメディアテーク」「バルセロナ見本市」など国内外の建築設計や再開発デザインを手掛ける一方、東北では岩手の陸前高田や釜石の復興にも携わっている。 国立競技場の建て替えは同じプリツカー賞受賞者で英国の建築家、ザハ・ハディド氏のデザインをコンペで採用。2019年のラグビーW杯、20年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとして完成させるため