桃やキュウリ、米などの産地として名高い農業大国・福島県。沿岸部の津波被害だけでなく、福島第一原発からの放射能による水や土壌の汚染が重くのしかかる。 「アブラナはちょうど食べごろ。これから菜っ葉やジャガイモの種芋をまこうと思っていたところだったのに」 原発から20〜30キロの屋内退避圏内に入っている広野町の自宅から避難して内陸部にいる男性(75)は焦る。25日には政府が屋内退避圏の住民にも自主避難を要請。畑に戻ることすら難しい状況だ。「これは人災。何をいっても通るものでないが……」 同じ屋内退避圏の南相馬市原町区に住む松浦秀昭さん(68)はいまも自宅に残る。飼育する10頭の馬を捨てられない。幸い、約80アールの水田も津波被害を逃れている。 「原発の作業員が頑張っており、放射能の影響はない」と松浦さんは信じている。だが、作付けをしようにも、例年なら農協から届く種もみが今年はない。放射能