東日本大震災でのけがが原因で障害が残った人がいる。岩手県山田町に住む大川貞男さん(77)。津波にのみ込まれてがれきがあたり左腕が今も不自由だ。被災地で復興が進む姿とは対照的に「自分だけ取り残されている」と孤立感を深めている。【本橋敦子】 半島に抱かれた風光明媚(めいび)な山田町の山田湾。震災の津波に襲われたが、今は穏やかな水面にカキ養殖のいかだが浮かぶ。湾の近くに住む大川さんはこの海で50年間、漁業にいそしんだ。「普段は忘れたふりをしてるけど、海を見るとやっぱり切ない」 震災が起きた時、大川さんはいったん避難したが、自分の船が心配になり、港に戻った。漁師仲間と防潮堤から海を見ると、水がひいて海底が見えた。「津波が来る」と思い、自宅に寄って大切な物を持って行こうとしたところに津波が襲来。家屋などのがれきと一緒に流された。 全身に傷を負い、破傷風に感染して生死の境をさまよった。半年後に退院した