トイレ掃除には不思議な力が宿っているようである。「トイレの神様」のヒットで今年の「紅白」初出場を決めた植村花菜さんの笑顔に、その思いを強くした◆トイレには女神がいる、毎日きれいにすれば「女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで」という祖母の教えを守ってきた。国鉄職員だった濱口國雄さんの「便所掃除」という詩は、教師が子供にトイレの美化や掃除の意義を説く際、度々引用される◆<扉をあけます/頭のしんまでくさくなります>で始まり、苦心惨憺(さんたん)の作業が綴(つづ)られ、こう結ばれる。<便所を美しくする娘は/美しい子供をうむといった母を思い出します/僕は男です/美しい妻に会えるかも知れません>。トイレ磨きは人の心を磨く修業であろう◆大手カー用品会社の創業者鍵山秀三郎さんは、10年にわたり黙々と社内のトイレ掃除を続けた。「トイレ掃除しかできない」経営者と笑われたこともある◆社員が参加し始めて「社風