表紙は中島らもの「とらちゃん」。作家に愛された猫たちのアルバム。「あの」コワモテの文豪が、猫の前ではぐにゃぐにゃになってて、面白い。夏目漱石の「吾輩」からアーネスト・ヘミングウェイの「ボイシー」まで、猫という視点でとらえなおすと意外な発見がある。 実は漱石は猫嫌い。「吾輩」のモデルとなった名無し猫は実在したようだが、出世作に貢献したからもっと大事にしてしかるべきなのにもかかわらず、「胡堂百話」(野村胡堂)ではこんなことを言っている。 「吾輩」の三代目が死んだ後、書斎を訪ねた野村胡堂が次の猫を飼うのか質問すると、「それなのです。私は、実は、好きじゃあないのです。世間では、よっぽど猫好きのように思っているが、犬のほうが、ずっと、好きです」 さらに、漱石の次男、夏目伸六の「猫の墓」には夫婦そろって猫好きでなかったと書かれている。「吾輩」に名前が無いのには、ちゃんと理由があったのね。 南方熊楠の「