無味乾燥なタイトルであるが、この本には日本という東洋の島国に西洋クラシック音楽を根付かせようとした、壮絶な物語が秘められている。クラシック音楽は西欧の文化である。それをあたかも日本古来の文化のように受容することは至難の業。それにあえて挑んだNHK交響楽団(N響)の苦闘と受容の歴史が丹念に綴られている。 教授格はほとんどが西欧の名高い指揮者たちだ。指揮者というフィルハーモニー楽団の絶対者たちの素顔もおもしろい。誰もが強烈な個性を持ち、主張する。多少楽団員と意見が違っていても、自分の考えを押し通す。 著名な指揮者たちの舞台裏のエピソードがおもしろい。カラヤン、小沢征爾、ストラビンスキー(自作自演)などの引き起こす事件に慌てふためきながらも、何とか付いていく。西欧音楽の全ったき受容という文化の精髄に、N響楽団員の全員が何とかついていき、世界に誇る管弦楽団にまで到達する、苦闘と団結の道筋は書を置く