香港基本法の解釈権と改正権は全人代常務委員会にあり、香港の裁判所は国防や外交などの国家行為を管轄しないと明記してある。国家安全を国家行為と解釈すれば合法的に国安法を制定できるよう最初から仕組んである。 香港国家安全維持法(以下、香港国安法)に対して今後どのように対処していけばいいのか、そして何が起きようとしているのかを見極めるためには、まず中国がどのような法的論理で何をしようとしているのかを客観的に位置づけなればならない。 ◆基本構造 その思考を明晰にするために、既知のことではあっても、先ずは順序だてて基本構造を見てみよう。 ●中華人民共和国憲法第31条(1982年改憲)には、「国家は、必要のある場合は、特別行政区を設置する。特別行政区において実施する制度は、具体的状況に照らして全国人民代表大会(以下、全人代)が法律でこれを定める」とある。 ●特別行政区で遂行される制度は「一国二制度」であ