いつまでもヨーロッパの模倣をするということは、甚だ面白からぬことであろうと思いますし、またいかにして日本固有の……少なくとも東洋固有の材料もしくは事業を研究し、発明して起こさなかったならば、本邦の産物を世界に広く売り広めて世界の富を本邦に吸収することは覚束ないと思われるのであります。それゆえに何か新たに有益なる発明研究をしなければならぬと思います。 1913年、100人を超える政治家や財界人たちを前に「国民科学研究所設立について」と題された大演説を行ったのは、酵素研究やアドレナリンの発見などで知られる化学者、高峰譲吉。イギリス、アメリカに留学し、日本と欧米との研究能力の差をよく知っていた高峰は、「国民科学研究所設立」の必要性を切実に感じていた。しかし、高峰がこの演説で要求した2,000万円という金額はあまりに大きく、“日本資本主義の父”渋沢栄一の呼びかにもかかわらず、財界人からの反応は芳し