『誰も「戦後」を覚えていない』(鴨下信一、文春新書、2005)の中に、「間借り」について書かれた興味深い章がある。 「不公平」こそが終戦直後の基調音 ぼくは戦後日本の、特に終戦直後の日本の基調音となったものの重要な一つは<不公平>という感覚だったと思う。この感覚が、戦後の不安定感、危機感、あるいはイライラ感や暴力衝動の根本にあった。すべてはそこから生じたのだ。 戦死した人間と無事で帰った人間、抑留された人間と帰国出来た人間、戦犯に指定された人間と逃れた人間、闇で儲けた人間と儲けられなかった人間、‥‥‥何もかもが公平でなかった。飢えている人間とたらふく食べている人間、着るものがなく震えている人間とぬくぬく着ぶくれている人間‥‥‥そして焼け出された人間と焼け残った人間。 <住宅難>と総称されるトラブルの基は、この不公平さだった。 昭和21年6月に<余裕住宅の解放>を義務づける改正住宅緊急措置令