人物ルポや評伝を読むのもいいけれども、当人が書いたものを読むのもその人を知る手掛かりになる。 『文學界』2011年3月号には、石原慎太郎「夢々々」が掲載されている。「何故か時々同じような夢を見る。夢の形はいくつかがあるのだが、何故また同じような夢なのかわからない。」という書き出しで始まる、夢日記風の私小説とでもいうのか。夢の中で見る事象独特の質感を伝えながら、そこに出てくる過去に様々なかたちで出会った人たち、出来事、いまもわだかまる思いとそこから生じる感情の噴出。石原慎太郎はこんな夢を見る男で、こういう小説を書く作家なのだ。私が危惧するのは、石原慎太郎は作家としての情念をそのまま政治に反映させ作家脳のまま政治家として現実を動かそうとしているのではないか、ということ。 橋下徹だが、2003年に出した『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術――かけひきで絶対負けない実戦テクニック72』(日本