文・多賀太(WRCJ共同代表) 「批判的人種理論」への反対運動アメリカで属性に基づく不平等や差別が語られる際に、ジェンダーと並んで、あるいはそれ以上に、真っ先に取り上げられるのが人種である。アメリカでは近年、学校教育における人種とジェンダーの扱いをめぐって、ある動きに注目が集まっている。「批判的人種理論」を教えることへの反対運動である。 批判的人種理論(Critical Race Theory)とは、1980年前後に、アメリカの法制度の批判的分析から導き出された考え方であり、一般には次のように理解されている。 すなわち、人種差別は個人の偏見といった目につきやすい要因だけでなく、社会的・制度的な見えにくい要因によっても生み出されており、一見中立的に見えるアメリカの法律や制度が、実は人種的に不公正な社会秩序を維持するよう機能している、という考え方である。 こうした批判的人種理論に基づく教育を禁