津波にのまれた消防士の妻と娘の名前も刻まれた慰霊碑が、海を見守り続ける=2月17日、宮城県石巻市の旧北上総合支所(跡地) 10年たっても消えない後悔がある。宮城県石巻市の消防士(39)はあの日の朝、妻を怒鳴りつけ、仕事に出た。アパート1階のベランダで顔を紅潮させた妻。抱かれた1歳2カ月の娘も大声に驚き、泣きだしそうだった。それが、2人との最後だった。 【写真】自宅リビングには亡くなった妻と娘の写真や遺品がきれいに並べられている 苦手なアイロンをかけてくれた柄シャツ 内勤2年目、年度末で忙しかった。「男は働けばいい」。一昔前の気質で子育てや家事はほぼ任せっきり。小さな衝突が重なり、夫婦関係はギクシャクしていた。その夜も送別会で遅くなる予定だった。アイロンがけが苦手な妻が仕事着のほかに宴席用の柄シャツも準備してくれていた。 「こんなしわだらけのシャツなんて、恥ずかしくて着れねえべ」。よく確かめ