『生と死の自然史―進化を統べる酸素』のための予備知識二冊目。 「なぜ老いるのか」 人間の寿命の信頼できる最高記録は120年とちょっとである。不老不死は今も昔も究極の夢であるが、そもそも生物はなぜ老いるのか? 老化は極めてありふれた現象であるにもかかわらず、実はこの答えに完全な答えは未だ得られていない。 「細胞は常に損傷に晒されているんだからいずれ劣化するのは当たり前じゃないの?」などと言ってみたところで、人間の限界寿命が120年程度であることも、種によって寿命が様々であることも何も説明できない。やはり老化には説明が必要なのである。 「老化は必然でも必要でもない」 摩耗説 生きることは摩耗する事に他ならず、老化は避けがたい必然である。 プログラム説 生殖を終えた個体は種の利益のため死んで若い個体に資源を譲るようプログラムされている。 かつて老化の理論は大きく分けてふたつあった。が、どちらも間