この記事は期限切れになりました
ここで紹介した2010年のバーナンキ宛書簡の署名者の一人であるAQRキャピタルのCliff Asness――アルファベット順なので筆頭署名者になっている――が、クルーグマンらの批判に対し、ドイツ人が真珠湾を爆撃した時のように*1まだ決着は付いちゃいねえ、と猛然と反論した。データによって間違いが明らかになったモデルに執着するAsnessの心理を不思議がったデロングのエントリをMark Thomaが引用し、以下のように書いている。 There's a version of this in econometrics, i.e. you know the model is correct, you are just having trouble finding evidence for it. It goes as follows. You are testing a theory you cam
The Everyday Economistブログを運営するジョシュ・ヘンドリクソン(Josh Hendrickson)が、Peter Howittの1992年論文*1を参照しつつ、ジョン・コクランらフィッシャー式逆さ眼鏡派/新フィッシャー派*2のニューケインジアンモデル解釈は正しい、と論じている。 彼によれば、Howittの論文を単純なニューケインジアンの枠組みに落とし込むと、以下のようになる。 IS方程式: ニューケインジアンのフィリップス曲線: ここでyは生産ギャップ、πはインフレ率、iは名目金利、rは自然利子率、Eは期待演算子、σとφはパラメータである。 中銀が金利を固定し、π*を望ましいインフレ率と考えるならば、合理的期待均衡において が成立する。この結果を上の2つの方程式に当てはめると、均衡インフレ率は となり、まさにコクランらが論じたように、均衡インフレ率は名目金利の増加関数
岩田一政氏が円安による交易損失に警鐘を発している(H/T 本石町日記さん)。それを読んで、円安になれば円建ての輸出価格も上がり、その点において輸入資源価格の上昇と円安は異なる、という単純な事実をきちんと押さえていないのではないか、という点が気になった。 実際の数字を見てみよう。 9/23エントリで用いた1995〜2013年度の輸出価格と円/ドルの前年比の関係は下図のようになる。 図中の線形回帰式より、 輸出価格前年比=-0.9978(-2.00) + 0.4290(7.99)×円ドル前年比 …(1) の関係が成立する(カッコ内はt値、以下同様)。 一方、同じ期間の輸入価格と円/ドルの前年比の関係は下図のようになる。 線形回帰式より、 輸入価格前年比=2.8187(1.67) + 0.3992(2.20)×円ドル前年比 …(2
齊藤誠氏が、三井住友トラストペンションジャーナルの2014年6月号(Vol.3)の記事において、実質為替レートと日米の物価連動国債の金利差との関係について考察している(H/T 氏の10/11ツイート)。両者の関係自体への考察には異論は無いが、結論の一項で以下のように記述している点が気になった。 2013年春からの円安は、物価連動国債金利の日米格差が負に転じたことを反映しているが、日米金利格差の急激な低下は、日本の物価連動国債金利の低下よりも、米国の物価連動国債金利の上昇に起因している。したがって、2013年春より日銀が金融緩和政策を積極的に展開した事情よりも、同期間において連銀が金融緩和政策を慎重に転換してきた事情の方が、実質円/ドルレートに対してより大きな影響を及ぼしてきたと推定できる。 というのは、氏の記事中のグラフに示されているように、円安が進んだのは2013年春からというよりは、む
クリス・ディローが表題の件について以下のような考えを巡らせている。 自信過剰とナルシシズムから経済的成功への因果関係はあるだろう。 ナルシストは挫折によって心が折れないだけの面の皮の厚さがある。 雇用者が実際の能力と取り違えるような出来る雰囲気を漂わせているため、出世の階段を上りやすい。 その一方で、選択効果もあるのではないか。成功した人は40代でリタイヤないしシフトダウンできる。というのは、6桁の給与を数年間稼げば、ロンドンの住宅価格インフレからして、ハムステッドに家を買って平均賃金の倍の収入を得ることが可能だからである。ということは、ナルシストや、自分のキャリアに「情熱を燃やす」ほど異常な人だけが、トップの経営者に上り詰めるほど長く仕事を続けることになる。 また、ジリアン・テッドが言うように、成功が自信過剰をもたらすという面もあるだろう。 Christoph Merkleらの新しい論文
Paul Krugman, “The Eurozone, Back in Crisis,” Krugman & Co., October 17, 2014. [“Europanic 2.0,” The Conscience of a Liberal, October 11, 2014] ユーロ圏危機 2.0 by ポール・クルーグマン Angelos Tzortzinis/The New York Times Syndicate 国際金融経済学を研究してる人なら誰だって「ドーンブッシュの法則」に聞き覚えがある:「危機の到来までには思った以上に時間がかかるが,ひとたび起これば思った以上に急速に展開する」.経済学者の故ルディ・ドーンブッシュが1997年のインタビューで語った言葉だ. 最近のユーロ危機も同様だ.しばらく前に,ユーロ圏のマクロ経済政策を牛耳っていた緊縮派は,そこそこ成長が上向いたの
Paul Krugman, “Using Less Energy Doesn’t Have to Mean Less Growth,” Krugman & Co., October 17, 2014. [“Slow steaming and the supposed limits to growth,” The Conscience of a Liberal, October 7, 2014.] エネルギー消費を減らしたら経済成長が鈍るとはかぎらないよ by ポール・クルーグマン Luke Sharrett/The New York Times Syndicate どうやらぼくらはいま,ちょっとしたものを目撃してるみたいだ.大きく異なる行動目標をもった3つのグループが――反環境保護の保守主義者,反資本主義の左翼の人たち,そして,自分たちは経済学者よりも利口だと思ってるハードサイエンスの科学
アレックス・タバロック 「ティロールと産業組織論」(2014年10月13日)/「ティロールと双方向市場」(2014年10月13日) ●Alex Tabarrok, “Jean Tirole and Industrial Organizaton”(Marginal Revolution, October 13, 2014) 経済学を学ぶ大学院生であれば、今回晴れてノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロール(Jean Tirole)の仕事にすぐにも触れることになる。彼が執筆している産業組織論のテキストである『The Theory of Industrial Organization』がそれだ。このテキストでは、産業組織論の分野――異なる市場構造(完全競争、複占、寡占、独占)下における企業の行動を対象とする分野――にゲーム理論を持ち込んで分析が加えられている。初版が出たのは1988年だが、それ
アレックス・タバロック 「『外的なインセンティブ』と『内発的な動機付け』の絡み合い ~ティロール&ベナボウ論文のエッセンス~」(2014年10月13日) ●Alex Tabarrok, “Jean Tirole and Intrinsic and Extrinsic Motiviation”(Marginal Revolution, October 13, 2014) 今年度(2014年度)のノーベル経済学賞受賞者であるジャン・ティロール(Jean Tirole)の論文の中でも個人的にお気に入りの一つと言えば――ティロールの「主要な」業績とは言えないかもしれないが――、ローランド・ベナボウ(Roland Benabou)との共著論文である「内発的な動機付けと外的なインセンティブ」(“Intrinsic and Extrinsic Motivation”)だ。 (報酬や罰といった)「外的なイ
告知 ブログ更新通知用のTwitterアカウント作ってみたよ。 → https://twitter.com/at_akada_phi/ http://philpapers.org/rec/NANMT Nanay, Bence (2012). Musical twofoldness. The Monist 95 (4):607-624. 1. 序 2. 二面性と図像 3. 二面性と音楽の演奏 4. 音楽の演奏の美的評価対音楽の美的評価 楽器性 マルチモダリティ 5. 結論: 真性性論争の枠付け 図像の二面性についての議論から音楽の美的評価にも二面性があるという議論をしている。 図像の二面性というのは、絵や写真を見る時に、線や印など表面的特徴と、描かれているものの両方の経験があるという話で、描写の議論ではしばしば指摘される。 ただし、ナナイはまず、図像の二面性を以下の二つに分けている。 図像表
そのタイトルどおり、まんが史の本。いわゆるコマ割りマンガの起源として、ホガースとテプフェールを取り上げ、その両者の差異を見ていく。 内在的な特徴だけでなく、印刷技術や「単行本書き下ろし」といった外在的な面についても注目している キャラクターの話やアニメーションとの比較なども 佐々木果はササキバラゴウの本名 100ページくらいの本で薄いな、と思ったら、判型がめちゃ大きかった。図版が豊富で、サイズも大きく載っている。『線が顔になるとき』にも載ってたホガースの奴とかが1ページまるまる載っていたりした 序 ストーリーまんがの源流 紙の量について 手筭治虫と赤本 ストーリーとコマ コマ割りまんがの父・テプフェール コマ割りまんがはどこから来たか 第1章 ストーリー・ページ・コマ 1.コマ割り表現の歴史 絵はいかに区切られたか 『ライモンドゥス・ルルス小約言』挿画 「時間性コマ配置」と「関係コマ配置」
9月は、自分の中でマンガ論月間と銘打って、マンガ論の本をいくつか読んでいた 結果的に、10月までかかったけど なんで、マンガ論月間やろうかと思ったかというと、きっかけは高田敦史「分離された内容」と伊藤剛「マンガのおばけ」 - Togetter [トゥギャッター] これがもう5月なので、思ってから実行するまでに結構時間かかってるけど 当初は、岩下本と積ん読になってた『線が顔になるとき』を読もうと思ってたくらいなのだけど、7月の表象文化論学会で三輪さんの発表を聞いて、三輪本も読もうと思い、さらに同月には『マンガを「見る」という体験』も発行されたので とりあえず読んだ順に並べると、こう ティエリ・グルンステン『線が顔になるとき』 - logical cypher scape2 鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』 - logical cypher scape2 三輪健太朗『マンガと映画』
World economy so damaged it may need permanent QE (世界経済は永遠のQEが必要かもしれないくらいぶっ壊れています) By Ambrose Evans-Pritchard Telegraph: 9:36PM BST 15 Oct 2014Markets are realising that the five-and-a-half year recovery since the financial crisis may already be over, says Ambrose Evans-Pritchard 金融危機から5年半に及ぶ景気回復は既に終わっているのかもしれない、ということにマーケットが気付きつつあります。 Combined tightening by the United States and China has done its
BIS warns on 'violent' reversal of global markets (BIS、国際市場の「暴力的」リバーサルを警告) By Ambrose Evans-Pritchard, International Business Editor Telegraph: 9:00PM BST 14 Oct 2014Investors take zero-rates for granted and unwisely believe that central banks will protect them, says the capital markets chief of the Bank of International Settlements 投資家は、ゼロ金利を当たり前だと思っている上に、中銀が護ってくれるなどと愚かにも信じている、とBISのキャピタル・マーケット・チー
Italy's 'UKIP' launches drive for euro referendum as five-year depression drags on (5年不況は未だ続く…で、伊版UKIPがユーロ国民投票をぶち上げました) By Ambrose Evans-Pritchard Telegraph: 8:10PM BST 13 Oct 2014Italy's Cinque Stelle throws down the gauntlet, warns Europe to come "well-armed" if it means to encroach any further on Italian sovereignty イタリアの5つ星ムーブメントが宣戦布告。ヨーロッパよ、イタリアの主権をこれ以上侵害する気なら「完全武装して」やって来るがいい、とのこと。 Italy's Fi
The great Lira revolt has begun in Italy (リラ大暴動がイタリアで始まったよ!) By Ambrose Evans-Pritchard Telegraph: 6:15PM BST 13 Oct 2014The biggest single party in the Italian parliament by votes has thrown down the gauntlet, calling for a euro referendum to end depression and save democracy, writes Ambrose Evans-Pritchard イタリア議会の最多票獲得政党が宣戦布告!不況を終わらせ民主主義を救済するユーロ国民投票の実施をぶち上げました。 The die is cast in Italy. Beppe Gr
Dam breaks in Europe as deflation fears wash over ECB rhetoric (デフレ懸念がECBのレトリックを押し流してダム決壊) By Ambrose Evans-Pritchard, International Business Editor Telegraph: 4:55PM BST 10 Oct 2014'We are reaching the end game in Europe. If they don't launch real QE soon, the consequences are too awful to contemplate,' warns RBS 「ヨーロッパに決戦が迫っている。量的緩和を直ぐに本格的に実施しなければ、その結果は考えるのも恐ろしいものになる」とRBSが警告しています。 A key gauge of
Eurozone on cusp of triple-dip recession as German exports crumble (ドイツ輸出激減でユーロ圏が三番底目前) By Ambrose Evans-Pritchard, International Business Editor Telegraph: 8:32PM BST 09 Oct 2014 Germany's Wise Men slash their growth forecasts for next year and call for fiscal stimulus, warning that the ECB's 'QE-lite' will achieve nothing ドイツの五賢人委員会は来年の成長見通しを下方修正し、財政刺激の実施を呼びかけ、ECBの「QEライト版」では何も達成されないとワーニングしました。 G
This is the most important chart in the world right now (これこそ今世界で一番重要なチャートなのだ) By Ben Wright, and Peter Spence Telegraph: 4:06PM BST 13 Oct 2014 The European Central Bank's key indicator of medium-term inflation expectations is "flashing red". The markets are watching to see what happens next ECBの主要指標、中期インフレ期待が「赤信号点滅」。市場は何が起こるのか注目中。 European stock markets fell to a 12-month low on Friday. At least
「小学校で過去最多」今年もまた、いじめをめぐって、大きな数字が目に飛び込んできた。 文部科学省がいじめや不登校等の事項に関して、2013年度の調査結果を発表した。メディアも同日、一斉に結果を報道した。 各報道の見出しでもっとも目立つのが、「小学校で過去最多」である。そして記事の中身をざっと読んでみると、「増加」や「最多」あるいは「いじめ20万件時代(小中高)」といった表現が並び、どうにも世の中が悪い方に向かっているかのような内容である。 なお、じつは中学校と高校ではいじめの件数は減少しているにもかかわらず、その記述はあまり目立たない。 はたして、この調査結果を、どう読むべきか―― 教師によるいじめ認知の成果すでに別の記事(「児童虐待7万件超 過去最悪」のウソ)で私が指摘したように、今日ほど人びとが子どもの人権に敏感な時代はない。いじめにしろ虐待にしろ、全体的傾向として私たちはこれまでにない
アベノミクス批判―四本の矢を折る [著]伊東光晴 本書は19世紀のドイツ国民ならぬ21世紀の「日本国民に告ぐ」憂国の書である。リベラル派の立場を鮮明にする筆者の「アベノミクス批判」に対して政権は反論するすべもない。これ以上明晰(めいせき)な批判はないと思われるほど理論的かつ説得的であるからである。 アベノミクスの第一の矢、異次元金融緩和は円安・株高をもたらした点で一般的には一応の評価を得てはいるが、著者は具体的なデータを基に「株価の上昇も円安も(アベノミクスとは)別の要因に基づくものであると断言」する。 だから、日銀副総裁に指名された岩田規久男氏が、通貨供給量の増加に伴う「人々の期待に働きかけ」を「おまじないのような話」と発言せざるを得なくなり、その講演録を読んだ著者は「戦争中の『皇道経済学』」を思い出す。 まさに、カール・シュミットが19世紀に向けた「宗教の魔術性は技術の魔術性へと転化し
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く