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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (29)

  • 「美しさ」のサイエンス『美の起源』

    多くの方が、直感で式①を選ぶだろう。正解だ。 式①の[オイラーの等式]が、世界で一番美しいとされる。ちなみに、式②の[ラマヌジャンの無限級数]は、最も醜いとされる数式だという。 最も美しい数式を探す実験は、認知科学者のセミール・ゼキが行った。 まずゼキは、fMRI装置を用いて、美しいと感じている人の脳の活性化している部位を特定した。美しい絵画を鑑賞する人の脳のうち、眼窩前頭皮質が活性化するという(*1) 。眼窩前頭皮質は、ちょうど眼球のソケットにあたる箇所に接している部分になる。 次にゼキは、数学者の協力を得て、多くの数式の中から、最も美しいと感じるものを選んでもらい、そのときの眼窩前頭皮質の状態を測定した。予想通り、美しい数式を見るとき、この部分の活性化が認められたという(*2)。数学的な美しさは、シンプルさなのかと考えると、興味深い。 問題:次の①と②のうち、どちらが美しいと評価される

    「美しさ」のサイエンス『美の起源』
  • 皮肉が分かる人・分からない人『アイロニーはなぜ伝わるのか?』

    せっかくの休日。ゆっくりしたいのに、「ほら、お出かけ日和だよ!」と友人にピクニックに連れ出される。みるみるうちに曇ってきて、どしゃ降りになる。びしょ濡れでになりながら友人に、「ほんと、お出かけ日和だね!」と叫ぶ。 晴天を期待してピクニックに行ったのに、どしゃ降りの大雨という現実に見舞われる。この期待と現実の違いを際立たせるために、「お出かけ日和」なんて逆を言う。これがアイロニーだ。 アイロニーとは何か この「期待」と「現実」を巧みに対比させ、あてこする構造から、アイロニーを解き明かしたのが『アイロニーはなぜ伝わるのか?』だ。 紹介される豊富な例を聞いていると、語られている言葉とは違う意味(意図)が飛び交っていることが分かる。「お出かけ日和」は分かりやすいが、小説やシナリオでは、かなり高度な「意図のやりとり」をしている。 これ、流行の機械学習では解析できないだろう。自然言語を形式的に解析して

    皮肉が分かる人・分からない人『アイロニーはなぜ伝わるのか?』
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の薄い本が出ます。

    知的冒険の書として『ゲーデル、エッシャー、バッハ』なるものがある。タイトルが長いので、頭文字をとってGEBとしよう。 GEBは、ダグラス・ホフスタッターという天才が、知を徹底的に遊んだスゴだ。不完全性定理のゲーデル、騙し絵のエッシャー、音楽の父バッハの世界を、「自己言及」のメタファーで縫い合わせ、数学、アート、音楽、禅、人工知能、認知科学、言語学、分子生物学を横断しつつ、科学と哲学と芸術のエンターテイメントに昇華させている。 「天才とは、蝶を追っていつのまにか山頂に登っている少年である」と言ったのはスタインベックだが、ホフスタッターに付き合って知を追いかけていると、とんでもない高みまで連れて行かれることを保証する。 ただし、このGEB、質量的には鈍器である。とても面白いが、とても重い。 この厚いGEBの薄いを作ろうという企画があり、参加させてもらった。「読むとGEBを読んでみたくなり、

    『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の薄い本が出ます。
  • 東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」

    「勉強とは何か?」を根源的に考えた一冊。一言なら「勉強とは変身である」になる。 巷に数多のノウハウではない。意識高い系の自尊心をくすぐるではない。勉強するとはどういうことか、勉強することで何が起きるのかを、言語と欲望の問題にまで踏み込み、掘り下げる。 議論のバックグラウンドに、フーコーの権力システム、ドゥルーズ&ガタリの脱コード化、さらにウィトゲンシュタインの言語観をも引き込んでいるが、咀嚼しきった上で原理的に考え抜く、その知的格闘が面白い。 勉強すると何が起きるのかを考える際、勉強する「前」はどうなっているかに着目する。自分が話す(=考える)言葉やコードは、そのときに自分がいる環境に依存しているという。半径5mの仲間や学校、家族、手元の端末のSNS、マスコミ、社会などから、「こうするもんだ」というコードにノッて話し、考え、行動する保守的な状態だという。 それが、勉強することにより、慣

    東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」
  • 読書猿『アイデア大全』はスゴ本

    アイデアとは、新しい世界の見方である。 既知から離れて/組み替えて/類推して/拡張して、異なる認識のやり直しをする、それがアイデアを生み出すということだ。だから、アイデアを創出する新しいツールを手に入れるということは、いわば新しい目を手に入れることだ。 『アイデア大全』には、創造力とブレイクスルーを生み出す42のツールが紹介されている。書を読むことで、いわば42の新しい目を手に入れることになる。書が類書と違うのは、「アイデアの求められ方」によってツールを使い分けている点にある。 すなわち、「0を1にする」プロセスと、「1をnにする」プロセスを分けている。更地の、何もないところから生み出す方法と、所与のコアから展開していくやり方と、明確に分けて構成されている。おかげで、抱えている問題について、どれくらい把握しているかによって、アプローチを切り替えることができる。アイデアツールは沢山あるが

    読書猿『アイデア大全』はスゴ本
  • 科学の面白さ・楽しさを伝える100冊 「科学道100冊」

    科学の面白さ・素晴らしさを届ける企画として、「科学道100冊」が公開されている。これは、科学者の生き方や考え方を伝えるために、100冊のが選ばれている。 ミソは「いわゆる理系」に閉じないところ。もちろん分野ごとの啓蒙書もあるが、「世界の見え方の変遷」を鳥瞰する科学史、センス・オブ・ワンダーを喚起する小説漫画、知的好奇心を刺激する図鑑など、いろいろ揃えている。 例えば、ディックの電気羊やパワーズ『オルフェオ』が「科学の」として並んでいる。これ、選者のメッセージが込められているんだろう誰だろうと見たら、編集工学研究所だった。松岡正剛さんの名前を前面にしてないのは、硬すぎず深すぎずが意図されているのだろう。 この100冊からいくつか選んでみた。さいきん微生物にハマっているわたしとしては、そっち系を入れて欲しかったが、ないものねだりかも。 生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問について

    科学の面白さ・楽しさを伝える100冊 「科学道100冊」
  • この本がスゴい!2016

    人生は短く、積読山は高い。 せめては「死ぬまでに読みたいリスト」を消化しようとするのだが、無駄なあがき。割り込み割り込みで順番がおかしくなる。読了した一冊に引きずられ、リストは何度も書き直される。 重要なのは、「あとで読む」は読まないこと。「あとで読む」つもりでリツイート・ブックマークしても読まないように、あとで読もうと思って読んだ試しはない。だから、チャンスは読もうと思ったそのときしかない。実際に手にとって、一頁でも目次でもいいから喰らいつく。勢いに任せて読みきることもあれば、質量と体力により泣く泣く中断するもある。かくして積読山は標高を増す。 ここでは、2016年に読んだうち、「これは!」というものを選んだ。ネットを通じて知り合った読書仲間がお薦めするが多く、それに応じてわたしのアンテナが変化するのが楽しい。わたし一人では、数学経済学歴史学、進化医学や認知科学の良を探し出せな

    この本がスゴい!2016
  • 恐怖を科学する『コワイの認知科学』

    怖いとは何か? 怖さを感じているとき、何が起こっているのかを、脳内メカニズム、進化生物学、発達心理学、遺伝子多様性からのアプローチで概観した好著。 喜びや悲しみ、怒りなど、人の心は様々な情動に彩られている。なかでも「恐怖」は根源的なものであり、より生理的に近いように思える。怖いものをコワイと感じるから、危険や脅威から身を守り、生き残れてきたのだから。こうした漠然とした認識に、科学的な知見を与えてくれるのが書だ。「怖いもの」に対する脳内での反応や、恐怖の生得説・経験説の議論、怖さの種類や抑制メカニズムを、研究成果を交えながら解説してくれる。 たとえば、「ヘビはなぜ怖いのか?」の研究が面白い。もちろん、ヘビ大好きという人もいるにはいる。だが、一般にヘビは「怖い」ものと嫌われている。 いきなり「なぜ(why)」と問いかけると、聖書の原罪における役割や、ヤマタノオロチ伝説など、文化や哲学のアプロ

    恐怖を科学する『コワイの認知科学』
  • 『私の本棚』を『無限の本棚』にする方法

    わたしは自分の書棚を持ってない。そう言うと驚く人がいるが当である。世に読書家なる人がいて、壁一面の巨大な書架や、で埋め尽くされた部屋、重みで抜けた床などを自慢気に語るが、正直なところ、羨ましい妬ましい→愛と憎しみと諦めの『私の棚』 もちろん我が家にも棚はあるし、トイレと浴室以外の全ての部屋にある。だが、それらは子どもの漫画場だったりの専用架になっており、いわゆる「わたしの棚」は無い。わたしのは、それぞれの棚の一部を間借りする形で、あっちへ数冊、こっちに少しと散らばっている。だから、好きが「いつかは自分の書斎を」を夢見るように、いつかは自分の棚を持てるようになりたい。 では、不自由しているかというと、そうでもない。自分の書棚がないのは不便だが、「不自由」ではない。むしろ、自由を得ていると言いたい。近所に書店はたくさんあるし(書棚は諳んじている)、図書館から好きなだけ借りられ

    『私の本棚』を『無限の本棚』にする方法
  • 『世界システム論講義』はスゴ本

    「なぜ世界がこうなっているのか?」への、説得力ある議論が展開される。薄いのに濃いスゴ。 世界史やっててゾクゾクするのは、うすうす感じていたアイディアが、明確な議論として成立しており、さらにそこから歴史を再物語る観点を引き出したとき。「こんなことを考えるの私ぐらいだろう」と思って黙ってた仮説が、実は支配的な歴史観をひっくり返す鍵であることを知った瞬間、知的興奮はMAXになる。 たとえば、「先進国(developed)」と「途上国(developing)」という語に、ずっと違和感があった。「後進国」は差別的だからやめましょうという圧力よりも、この用語そのものが孕む欺瞞を感じていた。 なぜなら、この語の背景として、近代化・工業化が進むというプロセスがあるから。なんなら、進化のメタファーを使ってもいい。産業構造が一次から高次に転換するとか、封建社会から資主義社会に"進化"するといった欧米の経済

    『世界システム論講義』はスゴ本
  • あなたの論文を学術書にする方法『学術書を書く』

    最初に答えを言うと、「良い編集者を持て」になる。 あなたの修論や博論は、どれほどユニークで面白かろうと、そのままにはならない。だから、潜在的な読者を見つけ、物理的なという形に仕上げ、配・流通に載せて、最終的に買って読んでもらうために、いくつかの準備や手直しが必要となる。その一番の方法が「良い編集者を持て」なのだが、そんなに簡単には見つからない。書は、こうした「ユニークで面白い論文」と「優れた学術書」の橋渡しをしている編集者が、どういう点に気をつけて、何をアドバイスしているかを、実際の出版事例を用いながら教えてくれる。 最も重要で、かつ全体を貫く勘所は、「誰が読むのか」だと言い切る。ふつうなら「何を書くのか」というテーマが大事ではないかと思うのだが、そのテーマですら、「誰が読むのか」によって揺らぐという。専門性の高い限定された研究対象を論じるのであれば、自ずとそれに興味をもつ読者も限

    あなたの論文を学術書にする方法『学術書を書く』
  • お金、セックス、戦争、そしてカルマ『西洋の欲望 仏教の希望』

    仏教の智慧から、現代をほぐした一冊。 巨大な問題を扱っていながら、わたし個人の「つらさ」を見透かされているように感じる。さらに、自分の中の仏教的な見方に気づくというよりも、むしろ、今までの知的探索のアプローチと重なっていることを思い知らされた。 資主義と格差社会の根源的な理由や、承認欲求・応答システムとしての性文化、持続可能な戦争のモチベーションなど、現代社会の問題を「仏教」というレンズを通して捉え直し、解きほぐす。「十分なお金を持つとはどういうことか?」「ブッダは遺伝子組換え品を認めるか?」など具体的な問いを立て、「空」、「無我」、「縁起」、「カルマ」といった仏教思想の観点で斬る。すると、そこに潜む「dukkha(苦)」が露になる。 残念ながら、こうした諸問題を一気に解決する手はない。ただし、わたしがどんな姿勢で向き合えばいいかは、分かる。イデオロギーや文化により常識化されたアタマか

    お金、セックス、戦争、そしてカルマ『西洋の欲望 仏教の希望』
  • 読んではいけない――人生を狂わせる毒書案内

    こういう挑発的なお題の典型は週間金曜日の「買ってはいけない」だろう。トンデモ論ながら思わず手にしてしまうインパクトがあった 読んではいけない――「毒書案内」も似たようなものだとタカをくくって一読、期待を裏切ってもらって非常に嬉しい。「スゴ」の企画「劇薬小説を探せ!」が好きな方なら超オススメ。 「読んではいけない」の真意は、読んだことによって取り返しのつかない事態になること。即ち、不用意にページを開くことによって、知らずに済んだ世界を"知って"しまうこと。あるいは、眠っていた感性が強制的に目覚めさせられ、さらには自分の拠って立つ基盤を切り崩されてしまう…そんな恐れがある。 もっとも、合う合わないは人それぞれなので、著者の口上どおりの「毒薬」効果があるかは分からない。それでも、少なくともわたしも激しく同意できるものをピックアップしてみる。また、書に触発されて読む気になった未読リストも挙げ

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  • 大学教師が新入生にすすめる100冊

    恒例の100冊リスト。 ただし、これまでの趣向を外した。「ベスト100ランキング」は楽しいが、変わりばえしない。毎年似たような「ベスト100」をヒネり出すのも飽きた。ホントのところ、「大学新入生」と銘打っているものの、わたしのためのブックリストなのだ。読んできたやつ、未読のやつ、読みたいやつを抽出したりふり返るためのきっかけなのだから。 だから、今回はランキングをしない。母体のリストは、「大学教師が新入生にオススメする」なんだけれど、そこからの選出はわたしの手になるもの。今までのリスト作成の過程で知り合えたものや、「読まねばリスト」に追加したもの。積読山に刺さったまま、課題と化しているものを中心に100挙げた。 もちろんこの100冊を参考にしてもいいし、母体リストから自分専用の一覧を作ってもいい。母体のリストは三千弱になるが、元となったのは、以下のリスト。ブックガイドは多々あるが、「大学

    大学教師が新入生にすすめる100冊
  • レイプの遺伝子『暴力の解剖学』

    もちろん、レイプの遺伝子なんてものはない。だが、レイプは「遺伝」するのかという問いには、非難と議論の渦中から、様々な応答がなされている。 たとえば、『人はなぜレイプするのか』[レビュー]は進化生物学の観点から解き明かす。結論からいうと、養育の投資量の男女差になる。男は養育の投資量が相対的に少ないため、繁殖のため多数の相手に関心を向ける。一方で女は、妊娠、出産、育児に多大な時間とエネルギーを費やされるため、男選びに慎重になる。このセクシャリティの差が、レイプの究極要因だというのだ。 ただし、レイプそのものが適応かどうかについては判断を保留し、フェミニストの立場からの「学習理論」を紹介することで、バランスを取ろうとする。すなわち、レイプとは男性位の歪んだ文化によってもたらされたという立場だ。挑発的な表紙とタイトルとは異なり、慎重にロジカルに議論を整理している。 一方、『暴力の解剖学』は大幅に

    レイプの遺伝子『暴力の解剖学』
  • 『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本

    意識は科学で説明可能か? このとんでもなくハードな問題に突入する。ギリギリ捻られる読書体験を請け合う。 著者は現役の哲学者、意識という現象を自然科学的な枠組みのもとで理解するという問題(意識のハード・プロブレム)に、真っ向から取り組んでいる。「物理主義」や「クオリア」、「哲学的ゾンビ」「意識の表象理論」を駆使して、科学・哲学の両方に跨がる難問に挑戦する。[wikipedia:意識のハード・プロブレム]に興味がある方は、ぜひ手にして欲しい。深く遠いところまで連れて行かれるぞ。 ハードがあるなら、イージーもある。流行りの認知科学にありがちな、MRIやCT、電気パルスを用いて、脳状態と意識経験の相関を明らかにする研究だ。例えば赤い色を見たとき、脳のどの部位がどのような状態になっているかを解明する問題で、これが意識のイージー・プロブレムになる。怪しげな脳科学者が、「脳はここまで解明された!」と宣っ

    『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本
  • 精神去勢された男どもに贈る爆弾『ファイト・クラブ』

    男は黙って読め(命令形)。 生きてる実感が湧かないなら、自分が何なのか見失ったら、そしてあなたが男なら、強力に切実にこれを薦める。長いこと絶版状態だったのだが、ようやく新版が出た。やっと安心して言える、読め、とね。 わたしは、「良い子」から「良い大人」になるように育てられてきた。受験もスポーツも就職も、周囲の期待に応えることばかりに費やされてきた。両親や教師、ひいては上司の期待に応えるために、「わたし」そのものを費やしてきた。良い子、良い社会人、良い夫、良い父、理想のパラメタとの FIT/GAP を埋めるための努力だけが、「努力」だと思い込んできた。そこには「わたし」なんてない。パラメタ化された外側だけしかない。 この主人公「ぼく」がそうだ。生きている気がせず、不眠症の頭を抱え、ずっと宙吊り状態の人生に嫌気がさしている。そんなぼくと出会ったタイラーはこう言う、「おれを力いっぱい殴ってくれ」

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  • 駅を見る目が一変する『駅をデザインする』

    出口は黄色、入口は緑、丸の内線は赤い○。何気なく目にしている駅案内をデザインしたのが、この著者だ。 著者は、地下鉄の初乗り30円だった1972年から、駅の公共空間における問題解決のデザインを進めてきた。書は、その豊富な事例とともに、彼自身の熱い思いを受け取るだろう。 そのデザイン思想は、「サインとはメディアである」の一言にまとめられる。そして、このメディアを、「案内サイン」と「空間構成」の2つの方向性から説明する。すなわち、パブリックな空間における、提供者と利用者のコミュニケーションを図る際、「言葉」に相当するのが案内サインであり、「場面」に相当するのが空間構成だというのだ。 「案内サイン」の事例は、営団地下鉄(今は東京メトロ)での改善になる。まず、多様な形式の案内表示を統一し、シンプルな記号体系にまとめる。その上で、乗車系・降車系のそれぞれの利用者動線に沿った組み合わせで提示する「サイ

    駅を見る目が一変する『駅をデザインする』
  • 文章読本の名著90冊から抽出した『究極の文章術』と、わたしが強力にお薦めする2冊

    上手になりたい全ての人に。 文章術を紹介するエントリが定期的にもてはやされる。中身は似たり寄ったりなのに、なぜ? それは、文章「術」が好きだから。ほらあれだ、勉強「法」ばかりアレコレ試して計画するけど、勉強そのものはあんまり、というやつ。このは、そんな人にピッタリで、かつトドメを刺す一冊になる。 ご紹介の前に、わたしの方法をお伝えする。文章が上手になりたいのなら、次をひたすら繰り返すしかない(ソース俺、反論歓迎)。 1. 書け 2. 削れ これだけ。書き出しが決まらないとか、構成がまとまらないとか、悩みが尽きないのは分かる。でもこれしかないんだ。そして、1と2をやらないなら、文章読を読んでも無駄。あれは、作家さんが小遣い稼ぎにらしいこと言ってるだけで、それだけでは参考にならぬ。1と2を繰り返していくことで、腑に落ちるんだよ。教則だけで運転ができるかよ、泳げるのか? まず書け、そして削

    文章読本の名著90冊から抽出した『究極の文章術』と、わたしが強力にお薦めする2冊
  • 死を効率化せよ『医師の一分』

    「死を効率化すべき」という世になるのかも。 命には値段がある(一人一年、一千百万円)。「優先すべき命」とそうでない命がある(子供・労災を優先、自殺未遂・暴走族は後)。こうした音は、トリアージのような切迫した状況だと見えやすいが、普通は病院の壁の向こうにある。ひたすら死を先送りにしようとする現場では、「もう爺さん寿命だから諦めなよ」という言葉が喉元まで迫ったとしても、口に出すことは許されない。 だから、これを書いたのだろう。がんの専門医として沢山の臨終に立ち会ってきた著者が、現代医療の偽善を批判する。自己決定という風潮を幸いに判断を丸投げする医師を嘲笑い、90過ぎの老衰患者に、点滴+抗生物質+透析+ペースメーカーまで入れるのは、当に「救う」ことなのか?と疑問を突きつける。 毒舌を衒ってはいるものの、ナマの、辛辣で強烈な批判は、わたしが死ぬ際の参考になる。他人に振りかざしたなら「不謹慎」で

    死を効率化せよ『医師の一分』