屈強で、狡猾な男であることは誰もが知っていた。しかし、こうも強引かつ鮮やかなやり方で、世界の行く末を手中に収めてしまうとは。私たちは、彼のことを見くびっていたのかもしれない。 もう誰にも止められない ウクライナ南東部、黒海に突き出たクリミア半島。その最南端・セヴァストポリの岸壁には、無数の弾痕が刻まれている。ここでロシアは、19世紀にはオスマン帝国と、20世紀にはナチスドイツと死闘を演じた。 21世紀。世界は三たび、固唾を呑んでこの地を見守っている。 ロシアの最高権力の座に就いてはや14年。プーチン大統領は今、ワイングラスをゆったりともてあそぶかのように、黒海を手のひらに収める。61歳にしてなお逞しい背中を玉座にあずけ、灰色の瞳で見据えるのはウクライナだけではない。慌てふためくEU諸国、大西洋の向こう側で、何もできずにいるかつての宿敵・アメリカ、そして茫然とするばかりの日本—。 世界の命運