以前、日本語で使われている数学の用語はどんなふうに造られたのか、ということに興味があって、少し追跡してみたことがある。 その際、辿り着いた資料の一つに『東京數學會社雑誌』という雑誌があった。これは、明治10年の設立で、日本で最初の学会とも言われる東京數學會社(東京数学会社)が発行していた学会誌だ。 この数学学会では、ヨーロッパから輸入された新しい数学を扱っているのだけれど、当時はまだ、いまのように訳語が定まっていない。そのため、同じ語でも、人によって思い思いに訳して使っていたらしい。 でも、想像されるように、それでは困る。 例えば、prime numberという語を、「不解数」とする者もあれば、「素数」とする者もあれば、また別の訳語を使う者もある、といった具合では、お互いにいちいち「あいつの言っているこれこれは、自分の言うところのこれこれに該当する」と頭のなかで変換しなければならない。 え