原題:Arrugas 監督:イグナシオ・フェレーラス 原作:パコ・ロカ 脚本:アンヘル・デ・ラ・クルス/イグナシオ・フェレーラス/パコ・ロカ 俺はまだ、大丈夫だ。 「そこ」へ息子夫婦に連れてこられた事は屈辱でしかなかった。エミリオはスペインで余生を過ごす元銀行支店長で、定年退職を迎えてしばらく経つ。だが、時折ふいに「銀行支店長」の頃に戻って、息子夫婦相手に融資の相談をしている、自分に気づいたりした。それでも、まだ、自分は、正常だ。そう、思っていた。 その「老人ホーム」で最初にエミリオが出会ったのは、相手が言ったことをオウム返しする男・ラモンであった。まるで壊れたテープレコーダーのような男は、元ラジオDJであるという。しかし、今は自分の言葉を話せなくなってしまったらしい。正直、不安は隠せない。家にいますぐ帰りたい。けれど、もう。 不安でいっぱいのエミリオを「部屋」で出迎えてくれたのはミゲルで