株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一 「卓球台が出てきましたが、どうしましょう」 引っ越しの折、倉庫の奥からバラバラにして立て掛けられていた卓球台が出てきて、その存在を知った社員は、「なぜ、卓球台があるのか」と、誰もが訝しく思ったらしい。不要物はすぐに廃棄して、無駄なスペースを切り詰めていたIIJの倉庫の片隅で、長いあいだ利用もされず、眠り続けていた卓球台に、社員が訝しい目を向けたのは当然である。 「卓球でもしますか」 月末、給与を払う時期が来ると、元卓球部だったという経理担当者といつも逃げ込んだ場所が、卓球台が置かれた空き部屋だった。一年半後には解体される予定だったビルの一画を、破格の賃料で借りて始まったのがIIJで、1992年のことである。解体のスケジュールにあわせ、日を経るにしたがい、入居していた企業が次々と移転し、最後まで居残ったのはIIJだけといった頃で