「ポン・デュ・ガール 」フランス, ガール -- Romain Cintract/Getty Images
先に日本では実態以上に格差社会論が流行していると書いたが、繰り返すようにこれは「格差社会」が幻想であるとか検討に値すべき問題でではないとという意味ではない。格差社会論が流行しているという厳然たる現実そのものこそが、まさに問題なのである。つまり、「どうして格差社会になったのか」という以上に、「どうして格差社会論が流行しているのか」という問いのほうがはるかに重要なのだ。格差社会という概念で現代社会の問題を整理されると多くの日本人が納得してしまうという事実、これこそが「格差社会」が抱えている根本的で深刻な問題だと考えるのである。 この理由については、確たる根拠はないが多分つぎのようなことじゃないだろうか。 ①人々の驚きを喚起しやすい(ので本が売れる) 6年前に佐藤俊樹『不平等社会日本−さよなら総中流』という本がベストセラーに近い売れ行きをしたが、私を含めてこの本を完璧に理解できたという人は少ない
格差社会に関する関心が高まっている。実際、「全国消費実態調査」によれば1999年から2004年にかけて30歳未満の所得格差が急拡大した。それまでは、将来の所得格差の大きさを表す消費の格差の拡大は観察されていたが、所得格差としては顕在化していなかった。不況の深刻化が、若年層の所得格差を拡大させた。このような若者の所得格差の状況が「下流社会」という言葉が流行語になった背景にある。 若年層における所得格差拡大は、超就職氷河期がもたらしたフリーターと失業の増加によって引き起こされている。それでは、どうして超就職氷河期がもたらされ、それがフリーターの増加につながったのだろう。 最大の理由は、不況がもたらした労働市場における需要の低下である。ただ、需要が低下しただけではフリーターや失業の増加につながらない。賃金が低下す れば、労働需要はそれだけ増えるからである。実際、マクロ統計でみると90年代に下方硬
少子化の原因について素人なりに考えてみたので、忘れないうちに書いておきたい。 日本では少子化と「非婚化・晩婚化」は密接に関係しているらしいので、とりあえず一緒の問題ということにしておきたい。 (1) 生活の必要性がなくなった こういう当たり前のことを誰も指摘してない。「若者は金ないから結婚しない。だから就業機会を」という人もいるが、どうか。むしろ根本的な問題は「生活上の必要性がない」「結婚するとむしろ経済的に苦しくなる」などなどだろう。昔の人が結婚するというのは、農業や商売などの家業を手伝ったり、家業をつぐ後継ぎを必要としたり、あるいはサラリーマン家庭なら夫の働いている間の家事を請け負ってくれたりということだった。つまり結婚すると明らかに生活が「楽になった」のである。 しかし、今は家を継ぐという意識は完全に減ったし、サラリーマンにとってのネックだった家事そのものの負担が格段に低下した。 こ
サービス化する社会 Business | Society 現代先進国の飽食・モノ余りの時代にあって、コモディティ化するコンテンツ(製品や情報)を差別化するポイントは何か。その重要な1つは「サービス」である。そして、「サービス」はコンテンツの善し悪しとは別に、受け手側の感情的な受け止め方によって、満足度が異なってしまうという特徴を持っている。 「『不快』化する社会、不快感を忌避する社会」 (via 「『非国民』に対する歴史的反応と現代的反応」)は、教育が、受け手側の「不快感」を元に善し悪しが判断されてしまうという一例で、興味深く読んだ。この件は、詳細なプロセスや状況が分からないため、何とも言えない部分もあるが、戦争の理不尽さを伝えるのに、赤紙を使うという着想、コンテンツ自体は必ずしも悪いものとは思わない。むしろ無味乾燥なテキストよりも強い、生きた印象を残すことが期待される。ただ、教育の顧客で
「下流社会」という本が売れているらしい。著者自身によるブック・レビューによれば、<下流とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ>そうである。この要約から導き出される価値判断の詮議は後に回そう。でも、結論を急ぐと、私は、下流でいいじゃないか。下流の上は中流だろうけれど、下流よりいいともいえないぞ、という個人的体験を話したいと思う。 『下流社会』という本が評判になっていると聞いたとき、私は即座に、豪州の「中流層の苦境」という雑誌記事(特集記事で、豪州の中間所得層が今、瀕死の状況に陥っているという90年代末の出来事)を思い出した。当時住んでいたシドニー
鈴鹿サーキットでの事故でレーサー生命を絶たれた僕が、幸運にもグリーンカードを得て渡米。しかしアメリカの理想と現実のギャップに失望し帰国するが、日本も金と欲に満ちた醜悪な国に変わっていた。醜悪な支配者階層への怒りを押し殺しながら数年間を過ごし、介護福祉士を経てケアマネジャーとなった、そんなmizzieの日々雑感。 アメリカから帰国したのでオートアップ誌での連載が打ち切りになって、最終回用にしようと思っていた原稿が掲載される事が無くなったので、こっちに未編集Ver.で載せさせて頂きます。 僕は2003年に移民としてサンフランシスコにやってきた訳ですが、70年代生まれの僕にとってアメリカは子供時代からの憧れの国であり、その国に移民として入国し、空港を出て強烈なカリフォルニアの日差しを浴びた時には、言葉に出来ない感動があったのを憶えています。 ですがこの度、永住権を返還して日本に帰国する事となりま
テレビ放送で「野宿者を襲撃する若者」(日本テレビ)に対するインタビューを見る。高校生の時、襲撃(野宿者を殴る、蹴る、持ち物に放火する…)を繰り返し、今大学生になった21歳のS君がインタビューに答えている。彼は、頻発する若者たちの野宿者への襲撃についてこう言っている。「殴ることもそうですけど、殴ることだけではなくて、みんなで殴るのがストレス発散になると思うんですね。テストの点数がどうとか、成績についてどうとか言われるのが、まあ、ストレスと言えばストレスですね」。 小学生の時から塾に通い、中学生のときにはトップクラスの成績だった彼にとってのストレスの原因は、いい子を演じ続けることだったという。「でもやっぱり親には反論というか、殴ったりもできないし、それをすると自分にとってもマイナスになるし、それを考えると、ホームレスなら殴られても構わないかなとも思います。無能な人間を、なにもしない人間を駆除す
選挙後、選挙結果などについては友人と電話で既にたくさん話したので、BLOGで書くつもりがなかったのですが、id:sugitasyunsukeさんのエントリーに触発され、今後、多くの問題について考えるためにまとまったエントリーを書きたく思ったので、今回の選挙について少しだけ考えてみたいと思います。杉田さんのエントリーについて言及するのが優先目的でもあるので、選挙結果についての言及や政権評価というよりは、ちょっと斜に構えたようなエントリーになります。 今回、圧倒的な「改革支持」に現れているように、「現状のままでは無理」感をほとんどの人が共有しているのだと思います。これは大変真っ当な感覚だと思います。特に、90年代を経過しての切迫感は大きい。というのも、80年代から90年代にかけて、「戦後民主主義」が自明視していたものの多くが「崩壊」したからです。一時期は、文化的に「ポストモダン」などの用語で説
朝、法務局へ行く。金融不動産関係者の集まる独特の雰囲気が漂う世界だった。交通機関がないのが痛い。帰りは暑い中散歩。 日中は、近く改訂が予定される公務員賃金表の印刷のためのレイアウト配置をいろいろやってみる。賃金表の内容が4倍以上に膨らむので、割付や字の大きさに苦労する。 夜、このブログが1年を超えていることに気づく。のべ38000人のみなさん、ありがとうございました。 いろんなことについて書きすぎているせいか、さまざまな検索キーワードで見ていただいているようです。 ●「大型店とまちづくり」(岩波新書)を読む。 先進国になったら避けられないもの、と嫌悪感を示しながらも半ば諦めてきた、郊外型の大型スーパー。 著者はアメリカでの郊外型スーパーとたたかってきた住民運動の調査結果から、郊外型スーパーは貧困の再生産システムで、地域経済の強化を実現するような流通システムを考える時期に来ていると訴えている
1976年福岡県生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科研究博士課程単位取得退学。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員・助手。専攻は理論社会学。社会学の道具立てを用いたネット社会の分析には定評があり、若き論客として注目を浴びている。著書に『暴走するインターネット』(イーストプレス)、『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)など。ついでながら宮台真司の弟子としても有名。 公式サイト:SOUL for SALE ――鈴木さん流のコミュニタリアニズムのヒントになるような、具体的な出来事なり運動はありますか? 鈴木 ヒントといえるようなことかどうか分かりませんが、ちょっと補助線になるような話をしてみたいと思います。近年、流行になっているといわれる「スピリチュアリティ」に関することなんですね。 スピリチュアリティというと、書店では「精神世界」なんてコーナーに並んでいて、疑
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く