先日紹介した朝日新聞夕刊の連載「ニッポン 人・脈・記」の「語り継ぐ戦場」第3回は陳輝という若者が抗日戦争の間に書いた詩を紹介している。 題は「ひとりの日本兵」。 〈ひとりの日本兵が/晋察冀の原野で息をひきとっていった。〉 詩はそう書き出される。 「晋察冀」は陳輝が活動した山西(晋)、チャハル(察)、河北(冀)各省の別名だ。 〈彼の眼窩には/赤黒い血が凝固し、/あふれるばかりの涙を凍らせ/悲しみを氷結させていた。(略)ふたりの農夫が、鍬を担いで、/やって来て、/彼を華北の岡の上に埋葬した。(略)中国の雪は音もなく、/彼の墳墓の上に降りていた。〉 〈このうら淋しい夜中、/とおい海をへだてた故郷の寒村で、/腰の曲がった老婆が、まだらな白髪を垂らして、/いっしんにはるかな戦地の息子の無事を祈っているにちがいない……〉(秋吉編訳「精選中国現代詩集」から) 陳輝はこの詩を40年2月12日夜に書いた。日