文/高史明(社会心理学者) ヘイトスピーチ対策法の施行 先日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、いわゆる「ヘイトスピーチ対策法」が衆院本会議で可決・成立し、施行された(2016年5月24日成立、6月3日施行)。 「ヘイトスピーチ」という語は、近年マスコミでも頻繁に報道されるようになったため、ご存知の方が多いだろう。直訳すると「憎悪表現」、より適切な日本語訳としては「差別扇動表現」である。 言論・表現の自由を保障する憲法との整合性を巡る長い議論を経てこの法律が制定されるに至ったのは、日本社会において、マイノリティの権利を脅かすヘイトスピーチが盛んに行われてきたという現実によるものである。 とくにこの10年ほどの間、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」などの排外主義団体は、東京・新大久保や大阪・鶴橋などの在日コリアンの集住地を中心に、在日コリアン