94年前の今日、9月16日、無政府主義者・大杉栄、その内縁の妻・伊藤野枝、そして大杉の甥であるわずか6歳の橘宗一が憲兵によって殺された。所謂、「甘粕事件」である。3人は憲兵隊特高課に連行された直後に惨殺され、その遺体は古井戸に投げ捨てられたという。関東大震災直後の混乱の中での出来事だった。 軍部は、当初、この事件の隠蔽を図った。しかし、すでに大物アナキストとして名を馳せていた大杉だけでなく小児までもが惨殺されたとあって、世間の耳目が集中。当時のメディアが騒ぎ立てたちまち大スキャンダルに発展した。結局、軍部は、事件発生からわずか4日後の20日、東京憲兵隊渋谷分隊長兼麹町分隊長であった甘粕正彦憲兵大尉および他一名を、「職務上不法行為」の疑いで軍法会議に送致することとなる。 軍法会議予審やその後の公判で甘粕大尉は、「私が応接室へ入って行きました時には、大杉は入り口を背中にして腰かけていました。私