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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (28)

  • 【全文公開】韓国は長年「最も遠い国」だった(映画監督ヤン ヨンヒ)

    筆者のヤンは64年に大阪で生まれ、「朝鮮」籍を持つ在日コリアンとして育った。現在は韓国籍を取得 PHOTO BY JJ <韓国出身の両親のもと、日で生まれ育った元「朝鮮」籍の筆者が、いま韓国で考えること――。反響を呼んだ誌特集掲載のルポを全文公開する> 「何このバカなニュースは! 韓国と日の政府がもめているときこそ、民間人同士が仲良くするように諭すのがテレビの役目じゃないか。あおるようなインタビューばっかり見せて。言論(メディア)がしっかりしなきゃ駄目だよ!」 韓国の首都ソウルに隣接する金浦市。行きつけの堂で太刀魚の煮付けをべていると、日韓問題についてのニュース番組を聞いていた女将(おかみ)さんが調理場から出てきて声を荒らげた。「お客さんがいるんだ、静かにしないか」という店主の言葉にも「国のことに市民が意見するのは当然じゃないの。黙っていられるかい」と真剣な顔。 しっかり主張する

    【全文公開】韓国は長年「最も遠い国」だった(映画監督ヤン ヨンヒ)
  • ゼロから分かる安倍政権の統計不正問題

    統計不正の質が分からないままでは、この問題の重大さを理解できない Issei Kato-REUTERS <どんな不正が、なぜ起こったのか、どこが問題なのか。複雑怪奇な厚生労働省の統計不正問題を解説する> 厚生労働省の統計不正をめぐって国会での論戦が続いている。野党はこの問題を徹底追及したいところだが、世論はあまり盛り上がっていない。 統計不正は国家の基盤を揺るがす大問題であり、多くの人がその重大性に気付いているはずだが、専門性が高く「よく分からない」のが正直なところだろう。不正の中身が分からなければ、それを評価できないのは当然である。稿では統計不正の中身について可能な限り平易に解説したい。 今回、不正が発覚したのは厚生労働省の「毎月勤労統計調査」である。これは賃金や労働時間に関する統計で、調査結果はGDPの算出にも用いられるなど、基幹統計の1つに位置付けられている。アベノミクスに関する

    ゼロから分かる安倍政権の統計不正問題
  • 「史上最悪」日韓関係への処方箋

    日韓はこの際、音をぶつけて議論をするべき(写真は18年5月に文在寅大統領を官邸に出迎えた安倍首相) Kazuhiro Nogi-REUTERS <一方的な主張をぶつけ合い建設的な議論ができない――根的な原因は限界を迎えた「65年体制」にある> 日韓関係が「史上最悪」を更新している。今度は韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の「天皇謝罪」という火に油を注ぐ発言だ。知日派で文在寅(ムン・ジェイン)大統領の側近という立場からすれば、あまりに無責任な発言といえよう。ただ韓国では、さほど影響力のない人の発言に安倍晋三首相まで直接怒りを表明することは、オーバーだと捉えられている。 最近の日韓は、相手を否定し、売り言葉に買い言葉で筋からずれた言い争いがエスカレートした状態だ。葛藤の背景には北朝鮮問題がある。 例えば日政府は、南北融和で従来の日米韓の枠組みが崩れ中国の影響力が増大し、日の存在感が

    「史上最悪」日韓関係への処方箋
  • 日本は大坂なおみの二重国籍を認めるべき! | パックン(パトリック・ハーラン) | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    日米二重国籍の大坂なおみは、22歳までにどちらかの国籍を選ばなければならない Toru Hanai-REUTERS <*今コラムは2018年9月の掲載時、国籍に関する日の法令について筆者パックンおよび編集部の理解が不足していたため、「日は二重国籍を認めない」という間違った認識で書かれています。詳細は最新コラムにて説明していますので、そちらをお読みください。> 残念なお知らせです。大坂なおみ選手は日本代表でオリンピックに出ません。 すみません。少し言い過ぎました。お知らせではなく予想、残念な予想なだけです。 ちょっと変な予想だけど、この読みには自信がある。残念な自信はある。 理由は簡単。IOC(国際オリンピック委員会)のルールとして、アスリートは国籍のない国の代表選手になれない。そして、日のルールとして、外国籍を有するものは日の国籍を有せない。法律上、アメリカ人の父と日人の母に生ま

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  • 「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営者が語る

    広東省深圳市の電子街「華強北」。中国一の電気街を意味する「中国電子第一街」と書かれた看板がある。その横の立方体には「公正、平等、自由、法治」など社会主義的核心価値観が書かれている。写真提供:ニコ技深圳観察会 <ニューズウィーク日版12月12日発売号(2017年12月19日号)は「日を置き去りにする 作らない製造業」特集。中国の「自社で作らない」、ドイツの「人間が作らない」という2つの「製造業革命」を取り上げたこの特集では、「ものづくりしないメーカーの時代へ」と題する記事で深圳の「エコシステム」についてレポートしている> 広東省深圳市が今、脚光を浴びている。未来感あふれる新たなサービスが続々と導入され、気鋭のベンチャー企業が次々と登場するイノベーション・シティ。停滞感漂う日とは異なる世界が存在するという。 深圳の何がそんなに「すごい」のか。深圳でEMS(電子機器受託製造)企業のジェネシ

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営者が語る
  • 中国崩壊本の崩壊カウントダウン

    <問題を抱えた中国経済は早晩崩壊する――根拠なき崩壊論に訪れる曲がり角。「反中」はなぜ生まれ、どう消費されてきたか> 一世を風靡した「中国崩壊」が今、曲がり角を迎えている。 中国崩壊とは「中国経済は数々の問題を抱えており、早晩破綻する」と主張する書籍や雑誌のことだ。いわゆる「反中」の中でも、主に経済に論考が限定されている。アメリカにも存在するが、日での出版数が圧倒的だ。 「世界第2位の経済大国を自称するが、統計はごまかしが横行している。実際のGDPははるかに少ない」「軍事費や治安維持費が右肩上がりに増えており、高成長を維持できなければ国家が破綻する」「中国の暴動・ストライキの数は年10万件超。成長率が下がれば国が持たない」「不動産バブルは既に限界」......といった個々の事象を基に、中国経済が立ちゆかなくなると結論付けるのが一般的だ。 05年の反日デモ、08年の中国製冷凍ギョー

    中国崩壊本の崩壊カウントダウン
  • 日本人の無自覚な沖縄差別

    <機動隊員の「土人」発言も、沖縄の米軍基地・撤退問題が聞き入れられないのも根は同じ。沖縄蔑視だ> (写真は、高江に配備された機動隊) 少なくとも米軍ヘリパッド建設が進められる高江(沖縄県東村)で反対運動に参加している市民にとって、機動隊員の「土人」「シナ人」発言に唐突感はなかった。機動隊員の暴言はいまにはじまったことではない。 「バカ」「気持ち悪い」「犯罪者」「ババア」──。こうした言葉が日常的に飛び交っていた。 「暴言の類は珍しくない。我々は最初から敵として扱われている」 そう話すのは高江でヘリパッド建設反対運動を続けている沖縄平和運動センターの大城悟事務局長だ。 地元(東村)村議の伊佐真次氏も「高江に常駐する機動隊には市民運動を敵視する体質がある。けっして機動隊個人の資質の問題ではない」と指摘する。 「土人」発言に多くの沖縄県民が憤っているのは、そこに沖縄への蔑視と偏見を見るからだ。

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  • 自伝でうつ病を告白したスプリングスティーンの真意

    アメリカで先月末に発売した自伝でうつ病に悩まされた過去を告白。これまでも社会正義のために献身してきたボスのメッセージとは> (写真は2014年12月、ニューヨークで行われたエイズ患者のためのチャリティー・コンサートで) アメリカのEストリート・バンドのギタリスト、スティーヴ・ヴァン・ザントはかつて、バンドを率いるブルース・スプリングスティーンが薬物に手を出さなかった理由について、父親のようにうつ病を患うことを心配したからだと語っていた。だがスプリングスティーンは、それよりずっと前からうつに悩まされていた。 9月28日に発売された自伝『Born to Run』のなかで、米ロック歌手のブルース・スプリングスティーンが長年うつ病に悩まされていた過去を告白し、多くのファンを驚かせた。メディアやネットもその話題で持ちきりだ。 ひと昔前なら、この手のカミングアウトをすれば厳しい結果を招いたものだ。1

    自伝でうつ病を告白したスプリングスティーンの真意
  • 沖縄の護国神社(1)

    論壇誌「アステイオン」84号(公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会編、CCCメディアハウス、5月19日発行)から、宮武実知子氏による論考「沖縄の護国神社」を4回に分けて転載する。かつて「戦没者の慰霊」をテーマにした社会学者の卵だった宮武氏は、聞き取り調査で訪れた沖縄の護国神社の権禰宜(現宮司)と結婚。現在は沖縄県宜野湾市に暮らす。論考はいわば「元ミイラ取りによる現地レポート」だと宮武氏は言うが、異なる宗教文化を持つ沖縄にある護国神社とは、一体いかなる存在なのか。その知られざる歴史を紐解く。 (写真:[図1] 米海兵隊が1945年6月28日に撮影した護国神社。「沖縄の影響を受けた典型的な日建築」という説明文が付いている。拝殿の屋根に砲弾の穴が開いている。提供:沖縄県公文書館) 二〇一六年の正月、那覇市奥武山(おうのやま)の沖縄県護国神社には初詣の長い列が伸びた。 護国神

    沖縄の護国神社(1)
  • 曖昧な君が代は「歌わない国歌にせよ」という提案

    賛否両論の狭間にある国歌の驚きの歴史を明らかにし、「聴く国歌」という新たな考え方を提示する『ふしぎな君が代』 『ふしぎな君が代』(辻田真佐憲著、幻冬舎新書)は、常に賛否両論の狭間にある国歌「君が代」について、そのなりたちから多様な評価、そして今後のあり方までを論じた書籍である。 いうまでもなく、「君が代」をめぐってはこれまで、肯定論と否定論が激しく対立してきた。肯定する側も否定する側も、ときとして感情に走る部分がなかったとはいえないだけに、論じにくい問題でもあったはずだ。 そんななか、右の立場から「君が代」の強制を主張するわけでもなく、左の立場から否定するでもなく、歴史をたどっていくことによって中立な立場を貫き通す著者のスタンスは評価に値するだろう。さまざまな思惑が行き交うからこそ、その客観性には説得力がある。 それにしても書を通じて実感するのは、「君が代」について私たち、少なくとも私自

    曖昧な君が代は「歌わない国歌にせよ」という提案
  • SEALDs時代に「情けない思いでいっぱい」と語る全共闘元代表

    安保闘争の経験を初めて語り、現代へのメッセージを込めた『私の1960年代』は全共闘世代のイメージを覆す一冊 『私の1960年代』(山義隆著、金曜日)は、1960年に東京大学に入学した著者が「山崎プロジェクト(10・8山﨑博昭プロジェクト)」の活動の一環として2014年10月4日に行った講演「私の一九六〇年代――樺美智子・山﨑博昭追悼――」の内容に加筆したものである。ちなみに山﨑プロジェクトとは、1967年10月8日の羽田闘争の際、機動隊と衝突して命を落とした京大生、山﨑博昭氏を追悼するものだという。 著者は科学史家で、東大闘争全学共闘会議の元代表である。これまで全共闘時代の経験については一切語らず、取材にも応じなかったそうだが、書には、1960年の安保闘争から、ベトナム反戦闘争、1970年の安保闘争、果ては科学技術や原発についての考え方までが、実体験に基づいて克明に語られている。 私の

    SEALDs時代に「情けない思いでいっぱい」と語る全共闘元代表
  • 暴走止まらない橋下徹市長、なぜその「正義」が通用してしまうのか

    「こっちが物、あっちは偽物」、「いいやそっちこそ」と言い争った「維新の会」の分裂は、血気盛んなロックバンドが勢い任せにバンドをぶち壊しているようにしか見えなかったし(分裂後、バンド名の使用権を争うこともよくある)、この22日に投開票される大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は、任期満了に伴う選挙ではあるものの、「解散します」と宣言していたミュージシャンが早速「再結成します」と意気込んでいるかのように見える。 橋下徹・大阪市長は、今年5月の住民投票で大阪都構想が否決されると、今年いっぱいでの政界引退を表明した。今回の知事選では引き続き、松井一郎・現知事が立候補しているが、彼は住民投票が否決された時から、「政治家として燃えるようなことが出てきたときに、二度とやらないとはいえない」(産経WEST)と含みを持たせてきた。 反対多数で否決されたことを受けた会見で橋下市長は「日の民主主義を相当レベルア

    暴走止まらない橋下徹市長、なぜその「正義」が通用してしまうのか
  • 「政治的中立性」という言葉にビビりすぎている

    放送大学の「日美術史」の試験問題に安倍政権を批判する文言が用いられたことを受けて、大学は該当部分の問題文を学内専用サイトから削除してしまった。「現在の政権は、日が再び戦争をするための体制を整えつつある。平和と自国民を守るのが目的というが、ほとんどの戦争はそういう口実で起きる」などの記載が問題視されたが、自衛が戦争を呼び寄せてきたのは、確かな史実である。 こういった事例の度に繰り返される言い分が、放送法にある「政治的中立性」だ。今回も、「放送法の規制を受け、一般大学より政治的中立性を配慮しなければならない」(来生新・放送大学副学長/東京新聞10月21日朝刊)との弁解が出ているが、すんなりとは受け止められない。 「放送法」が定める政治的中立性。具体的な文言としては第4条「放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによ

    「政治的中立性」という言葉にビビりすぎている
  • 首相談話についても、アメリカ人なので語りません | パックン(パトリック・ハーラン) | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    お待たせしました! 大好評の「むかつくアメリカ人シリーズ」第二弾! 前回は憲法や安保法案をテーマにしたが、今回は首相談話を取り上げようと思っている。また微妙な話題だからまたお断りから: まず、覚えておいてほしいのは、僕は日が大好きってこと! 大人になってこの国を選び、日に住んでいる。日人女性と結婚し、日人の子供が2人いる。そして、日に骨をうずめる! 気持ちの大半は日人だし、心から日を愛している。自分でも驚きだが、日での生活が僕の人生の半分を占める。 しかし、僕がアメリカ人であることも忘れてはならない。もちろん、過去の戦争の責任は日単独のものではない。戦前も、戦時中も、戦後でさえアメリカは山ほど悪いことをしている。この後「お詫び」の話がでるけど、「まずはアメリカからどうぞ」と言われて当然だ。当にひどかった(今もひどい)と思う。代表として心からお詫びします。 でも、僕の謝罪

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  • 愛国歴史教育に対する「米高校生の異議申し立て」が勝利した日

    最近の各国の保守主義の運動には「自国の歴史に誇りを持てるような教育」へと、歴史教育を改変するという志向があります。アメリカも例外ではありません。例えばブッシュ時代の「草の根保守」の復権を契機として、ハッキリとそうした運動が立ち上がっています。 そのリーダー格といえば、リン・チェイニー氏です。チェイニー前副大統領の夫人ですが、歴史家というより文学者という立場で「愛国歴史教育」を推進していたのです。 チェイニー氏はまず「建国の歴史」に関して「トーマス・ジェファーソンの理想主義とか、権力への牽制」といったエピソードではなく、「独立戦争の苦しい戦いを勝利に導いたワシントンの勇気」を前面に出して教えよとか、ベトナムや公民権の話ばかり教えるのはバランスを欠くなどという主張を「運動」にしたのです。 更にチェイニー氏の前にフランシス・フィッツジェラルドというジャーナリストは79年に出した『アメリカ史の改善

    愛国歴史教育に対する「米高校生の異議申し立て」が勝利した日
  • 朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解

    いわゆる「従軍慰安婦」問題をめぐる証言記事に関して朝日新聞が誤りを認め、取り消したことに関連して、あらためてこの「従軍慰安婦」の議論が盛んになっています。その議論の多くは「誤報」、つまり「狭義の強制」があったと報道されたことで、「国際社会の誤解」を招いた朝日新聞には責任があるという考え方です。 例えば安倍首相は9月14日のNHKの番組で、朝日新聞が「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」と述べたそうですし、加藤勝信官房副長官も17日の記者会見で、「誤報に基づく影響の解消に努力してほしい」と述べています。 また朝日新聞の訂正直後に実施された、読売新聞の世論調査によれば、『朝日新聞の過去の記事が、国際社会における日の評価に「悪い影響を与えた」と思う人が71%に達した』そうです。 しかし、こうした「国際社会に誤解されている」という議論は、それ自体が「誤解」であると考えるべ

    朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解
  • 『永遠の0』の何が問題なのか?

    先月に一時帰国した際、評判の映画『永遠の0』を観ました。また、小説も評判であるというのでこちらも読みました。どちらもプロの仕事であると思います。技術的に言えば、ストーリー・テリング(物語の展開)だけでなく、セッティングやキャラクターの造形、そして何よりも時空を超えた大勢のキャラクターが、物語の進行とともに「変化していく」効果が見事です。 キャラクターの「変化」というのは、「成長」したり「相互に和解」したり、あるいはキャラクターに「秘められていた謎」が明かされたりしてゆくという意味です。そうした効果を、時空を超えた複数のキャラクターを使って、しかも2000年代と第二次大戦期という2つの時間軸の中で実現している、そのテクニカルな達成はハイレベルだと思います。 更に言えば、老若男女の広範な層にまたがる読者あるいは観客は、多くのキャラクターの中から自分の感情を投影する対象を見出すことができるように

    『永遠の0』の何が問題なのか?
  • 1年後の北京。人気は和食にラーメン、そして「半沢直樹」

    昨年9月に中国で起こった、激しい反日デモから1年余りが経った。わたしも中国大陸の先っちょにある香港での暮らしを入れればすでに大陸生活も20年を軽く超えたわけだが、確かにあそこまで大規模な「うねり」を感じたことはこれまでなかった。だが、そこから1年、北京のような都会ではすっかりあの「うねり」などどこ吹く風といったように街は姿を変えている。 ちょっと最近、数軒の日料理店に行くチャンスが続いたのだが、そこで見た光景はあの激しいデモと、その後デモには参加していなかった人たちにも「感染」した重苦しい空気とはまったく相容れないものだった。 店内の8割以上が中国人のグループで、みな手慣れた様子で和をつついている。さらに日人オーナーが醸しだすお店の雰囲気をみなが十分に楽しんでいる。以前のように周りが眉をしかめそうな、中国レストランでありがちなふるまいではなく、みながその店のルールと雰囲気に従って味わ

  • 嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月30日号掲載〕 6月30日、私は最近話題になっている嫌韓デモに行ってみた。このデモは東京の新大久保で何年も前から、毎週日曜日に行われているものだ。私は不安を胸に家を出た。自分の身も心配だったが、新大久保の人々のことも、日の対外イメージのことも心配だった。 実は新大久保はサンフランシスコのチャイナタウンやパリの日人街と同じような「観光スポット」だ。外国人にとって、新大久保のコリアンタウンを歩くことは伊勢丹新宿店の地階と同じくらい楽しさと驚きに満ちている。伊勢丹が日がいかに洗練されているかを示しているとすれば、新大久保の街が示しているのは日が外国人に対してフレンドリーで開かれた国であり、他国の文化が生き生きと存在できる国だということだ。 だがデモのせいで、新大久保は日が外国人にとっていかに不快な国になり得るかを象徴する場所となった。嫌韓デモ

  • 日本の「国のかたち」、戦前戦後の変化を認める立場とは?

    今年も二回の原爆忌に続いて、8月15日がやってきます。この「敗戦の意味」を考える上で重要なのが、戦前と戦後で日の「国のかたち」は変わったのかという問題です。実は、この問題に関しては明確な合意ができていません。 1つの考え方は、日という言語や文化を持った文化圏(エスニシティー)は不変だが、統治機構という意味での国家(ソブリン)は変化したという見解です。日国政府は明らかにそのように行動していますし、国際社会からもそのように認知を受けていると思います。 例えば、現在の国際連合は大戦中の「連合国」の正統性を継承しており、「枢軸国」は「旧敵国」だという規定が国連憲章には入っています。いわゆる「敵国条項」ですが、日政府は統一後のドイツと共同で公式にこの「敵国条項の廃止」を要求し、総会決議にも漕ぎ着けています。(各国の批准を促進する努力はしていませんが。) それは、国際社会が「現在の日は敵国で