「たらちねパラドクス」の完結巻が発売された。全2巻という長さは当初からの予定だったという。少しずつ伏線を張りながら丁寧にランディングしたその構成はすばらしく、特にラストの展開と演出は近年稀に見る美しさだった。実験性と一般性を空中分解することなく両立させた稀有な作品として、長く4コマファンの記憶に残り続けるだろう。 本作には大きく二つの挑戦が見られる。 ひとつは、4コマ漫画としての演出に対する挑戦。 もうひとつは、学園日常もの漫画としての終わり方に対する挑戦。 これらについて語ることで、本作の魅力を少しでも伝えられたらと思う。 「演出の自由」と「物語の安定」 近年の萌え4コマ界ではこれまでの常識を覆すような演出を試みる作品が多数存在し、中でも「たらちねパラドクス」はその特性が顕著である(過去記事参照)。驚くべきことに、一話につき最低一つは斬新な演出を盛り込んでいる。 いくつか例を見てみよう。