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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (1)

  • 弱者の服毒 - 傘をひらいて、空を

    泣いてごめんね、と彼女は言った。不愉快にさせてごめんね。自分の声が遠いところから聞こえた。頭蓋の中で反射しているはずの声が遠くから聞こえている気がするのだ。涙は止まり、声は平板になり、視界から立体感がうしなわれて、からだに当たる衣類の布がごわごわと大げさに、有毒な異物であるかのように感じられ、それから、その感触が消えた。ごめんなさい、と彼女は言った。世界が遠ざかった。苦しくなかった。苦しくないのはいいことだと彼女は思った。 自分が彼にひどいことをしたので謝っていたと彼女は思っていたけれども、どうにもからだが動かしにくくなって、産休をとって家に居るのに家事もできないので迷惑だろうと思って実家に戻ったら、とたんに彼が飛んできて謝るのでなんだか驚いた。彼はいつもの彼ではなかった。実家だからきまりごとも少なくて、だからかもしれなかった。彼らの家にはいつのまにかできていた(と彼女には感じられた)ルー

    弱者の服毒 - 傘をひらいて、空を
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