路地のゆくえを考える(1/4) 前回の原稿にはたくさんの反響があった。ありがとうございます。 被害者の哀しみの中にマイクを突きつけるような強引な取材方法はテレビを見ていて私も憤慨に堪えない。でも私自身は節度を持って取材していると思うだけに、メディアをひとくくりにした議論はちょっとついていけないものを感じた。とはいえ、伝記をはじめ、ものを書くということはどこでまちがいを書いたり、人を傷つけたりしているかわからない。こころしなければならない。しかし、それとITの時代の「個人情報保護法」の間違った使用法とはべつのことである。 大正12年の関東大震災後、前の妻伊藤野枝が虐殺されたとき、殺到するメディアへの辻潤の言葉が思い出される。彼は記者たちに「御職掌柄でおいでのことですから」と言ったのだ。伊藤野枝は彼を捨て大杉栄に奔(はし)った。辻潤は二人の子まで生した前妻を殺された男であり、しかもその妻に