「薬を出すしか能がない」どの診療科においても、薬の処方に関する基本的な原則は、 「薬の種類はなるべく少なく」 「効果のない薬剤は減らして中止に持ち込む」 というものです。多くの薬剤をカクテルや七味のように用いる「多剤併用」は、治療効果が低いとして戒められているのが、現代の精神医学の流れです。 しかし、精神科医に対しては 「薬を出すしか能がない」 「次々と新しい薬を出してくる」 「薬をなかなか減らしてくれない」 という批判があるのも事実です。わたし自身も、「こういう批判があるのも仕方がない」という認識を持っています。 理由は、二つあります。一つには、薬物療法の技量が疑われる一部の精神科医の存在です。初診からいきなり多種類の薬剤を大量に用いる、あるいはどんどん薬剤の種類が増える一方、などです。飲んでいる薬を減量・整理することから治療が始まるケースも珍しくありません。減量しただけで状態が良くなっ
認知症の人は記憶障害に加え、暴言や妄想、徘徊(はいかい)などの症状が出ることがある。こうした周辺症状(BPSD)に対する薬物治療のガイドラインを七月、厚生労働省の研究班がまとめた。不適切な投薬で周辺症状がひどくなったり、歩行障害などの副作用が出たりして、生活の質が悪くなるケースが後を絶たないことが、指針作成の背景にある。 (佐橋大、山本真嗣) 周辺症状は、記憶や時間の感覚が失われることで起きたり、従来できていたことができなくなることへの不安や混乱などを背景に生じたりする。多くの場合、不安を受け止め、不適切な言動にも頭ごなしに怒らないなど、接し方を工夫すると軽減できる。
不安などを訴える認知症の高齢者に向精神薬が安易に処方され、意識がもうろうとなった高齢者が転倒事故を起こして寝たきりになるなどのケースが後を絶たないことから、厚生労働省の研究班は、薬の使用に関するガイドラインを作成し、全国の自治体に配布しました。 認知症の高齢者の中には、強い不安やうつなどの症状を訴える人がいて、医療現場では向精神薬が処方されていますが、これらの薬には運動機能を低下させるなどの副作用があり、意識がもうろうとなった高齢者が転んで骨折し、寝たきりになるなどのケースが後を絶ちません。 このため、厚生労働省の研究班は、薬の使用についてのガイドラインを作成し、全国の自治体に配布しました。 新たなガイドラインでは、医師が薬の副作用について患者本人や家族に説明し同意を得ること、向精神薬のうち副作用が起きやすい抗不安薬は原則使わないことなどとしています。 そのうえで、夜眠れなくなったり、転倒
人類最古の医薬 さて今回から、個別の医薬について取り上げてゆきたい。歴史と医薬の関わりを述べてゆく本連載のトップバッターにふさわしいのは、やはり人類が最も古くから用いてきた医薬だろう。各種の記録を探っていくと、どうやらそれはモルヒネであるらしい。 人間は、痛みに弱い。ちょっとした頭痛や腹痛ですら、作業の効率を大幅に下げてしまう。長く続く慢性的な痛み、骨折などによる激痛であればなおさらだ。鎮痛剤ほど、人類が切実に求めてきた医薬はない。 そして人類がこれまで手にした最強の鎮痛剤こそ、モルヒネに他ならない。飛躍的に創薬技術が進歩し、様々なアプローチの鎮痛剤が登場している現在でも、これを超えるものはいまだ創り出されていない。 モルヒネは、肉体のみならず心の痛みにすら効いてくれる。少量のモルヒネ投与は、日頃の憂さも悲しみも、あっという間にきれいに消し去ってくれる(筆者は試したことはないが)。だが、そ
MBSの「JUMP OVER CANCER」キャンペーン。 今回の特集は、がん治療の最前線、この10年で、治療の選択肢を大幅に増やした新しい抗がん剤を取り上げます。 「分子標的薬」といって、これまでの抗がん剤のイメージをがらりと変えた、この薬。 現状と課題を報告します。 大阪市内に住む、筏津智子さん。 6年前、腹部に直径10センチほどの固まりが出来ているのに気づきました。 病院で診てもらったところ、血液のがんといわれる「悪性リンパ腫」と診断されました。 「(医師から)超難治性で、再発することが多いと言われた。『すぐに無菌室に半年ほど入院してください』と言われて、今までで一番ショックを受けました」 医師から、"命に関わる病だ"と宣告された筏津さん。 治療には5年前に承認された新しい抗がん剤を使う、と説明を受けました。 それが、「分子標的薬」でした。 従来の抗がん剤6種類のほかに、「リツキサン
週刊ダイヤモンド特別レポート「ここまで効く!ガン治療薬最前線」 日本人の2人に1人が発症し、いまや“国民病”といわれるガン。その治療法として近年、抗ガン剤などを用いた化学療法の進歩が著しい。ガン種別のトレンド療法と期待の最新治療薬を追った。 バックナンバー一覧 海外では使えるクスリが、日本で使えるまでに時間がかかる。「ドラッグ・ラグ」の問題は、ことガン医療の分野に限っては、昨今ではかなり解消されてきた。ガン治療薬のラインナップは世界標準に近づくと思われたが、意外な分野で格差が再び開きつつある。三つの課題を取り上げた。 “第4の治療”の期待高まる ワクチン 手術、化学療法、放射線療法に次ぐ“第4の治療”と期待されるのが「ガン治療ワクチン」だ。 今最も進んでいるのは、「ペプチドワクチン」と呼ばれるワクチンの一種だ。現在、メルクセローノが非小細胞肺ガンなどを対象としたワクチンの、グローバルな治験
抗体医薬などの分子標的治療薬の登場により、がんの医療は、克服ではなく、「生活の質を保つがん医療」へと目標を変えつつある。人口高齢化とともに、今後も増え続けるがんとどう向き合っていけばよいか、がん医療の最新事情を紹介する。 増え続けるがんによる死亡 人口の高齢化が最大の原因 わが国の死因のトップは1981年から、がん(悪性新生物)で、現在も男女ともがんによる死亡は増加し続けている。2009年のがんによる死亡は、34万4105人(男性20万6352人、女性13万7753人)で、これは1975年の約2.5倍の数である。 がんの死亡が増えている主な原因は人口の高齢化である。がんの死亡率が増加しているかどうかを調べる場合、高齢化など年齢構成の影響を取り除いた死亡率である「年齢調整がん死亡率」というデータが用いられるが、実は、この年齢調整がん死亡率は1990年代後半から減少に転じているのだ。つまり、高
清野 仁與(エディター) 【第4回】 2008年12月24日 「風邪かな」と思ったら…。 市販薬よりも「熱々のチキンスープ」が効く!? 通常よりも1ヵ月も早くインフルエンザの流行が始まったという発表がありました。年末年始の貴重な長期休暇シーズンを、風邪をひいてベッドで過ごしたなんていうことにはなりたくないですね。できるだけ人ごみを避け、頻繁な手洗いとうがいを実行して、風邪をしっかり予防してください。 でも、もし「風邪かな」ということになってしまったら――。そのときは、温かい飲み物が強力な助っ人になってくれそうです。 「風邪をひいたら」あるいは「風邪かな」と思ったら、例えば、日本では玉子酒、米国ではチキンスープと、温かい飲み物を飲みなさいという民間療法は世界中に数多くあります。温かい飲み物には、実際に風邪の諸症状の改善において、市販薬に負けない効果があるようです。 インフルエンザや風
「脳を増強する薬」合法化を主張する『Nature』論説 2008年12月15日 サイエンス・テクノロジー社会 コメント: トラックバック (0) Brandon Keim Image: Todd Page 脳の働きを安全に高めてくれる薬があるのなら、なぜ使わないのだろうか? 自分が使いたくないからといって、なぜ他人の使用まで止めるのだろうか? 成績や仕事の評価を上げたいため、本来なら注意欠陥障害の患者に処方される薬を、その目的とは違った意図で日常的に、違法に服用している人々が存在する中では、こうした倫理的な問いかけが時宜を得たものになる。 『Nature』誌から、1つの答えが提示された。倫理学や神経科学の分野で著名な7人によって、12月11日号に掲載された論説「認識能力増強薬の、健康な人による責任ある使用に向けて」だ。 結論を言えば、合法化すべしということだ。 「責任能力がある成人は、薬に
ネット販売業者などの反発を受け、日本薬剤師会など9団体が薬のネット販売に反対する緊急記者会見を行った=11月28日、東京・虎ノ門 ■より強い規制求める声も 平成21年6月から、インターネットで風邪薬が買えなくなるかもしれない。改正薬事法施行に伴う省令改正案で、厚生労働省が「薬は対面販売が原則」とし、販売業者への規制を検討しているためだ。ネット系の販売業者らが反発する一方、薬害被害者らは規制をさらに厳しくするよう要望するなど波紋が広がっている。(平沢裕子) 医師の処方箋(せん)がなくても買える一般用医薬品(大衆薬)には、これまで販売に関する法律はなかった。薬剤師不在のドラッグストアなどで、アルバイト店員が風邪薬を販売したり、インターネットなどで薬が通信販売できたりするのは、このためだ。 しかし近年、本来は医療用として使われていた薬が「スイッチOTC」として一般用医薬品でも売られるようになった
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く