電子書籍の市場では熱に浮かされたような騒ぎが続いているが、小説のような一般書籍に関して言えば、デジタル化は格別、問題視するようなことではない。作り手にとって本を作り出すプロセスに基本的違いはないし、読み手の側から見ても、本の内容を読み取るために気持ちを集中させる“没頭型読書”のスタイルは、何ら変える必要がないからだ。しかしながら、絵本出版社の立場に立つと、従来の手法や常識が全く通用しない現状が待ち受けている。[ロビン・バートル=寄稿] 底本になる紙の絵本と比べると、現在、世に出回って いる電子絵本はかなり見劣りがするものがほとんどだ。かたやiPadなどのタブレット端末用には、豪華絢爛なアプリが出現している。紙をデジタルに移し替えただけの電子絵本をもって、最先端のアプリに対抗しようとするのは、いわば紙とペンでビデオの世界に戦いを挑もうとするのと同じぐらい空しいことだ。 「デジタル化」で失われ