エメトフィリアという語はあまり聞き慣れないものだが、嘔吐性愛、すなわち、他人の嘔吐を見ることないし自ら嘔吐することによって興奮するフェティシズムのことである。emetophilia という語は、「私は嘔吐する」を意味する古代ギリシア語に、ペトフィリアやらフィロソフィーやらでおなじみの「私は愛する」を意味する古代ギリシア語がくっついたものであるらしい*1。 なかなか格好良い名称を与えられているわりに、これを主題に扱っている学術論文は、私の知る限り一つしか無い*2。それが Robert J. Stoller が1982年に発表した論文、"Erotic Vomiting"である。 ここでは、三人の女性の症例が紹介されている。嘔吐の開放感によって性的興奮をえるという四十代のレズビアン女性、幼いころ義父から折檻を受ける最中に嘔吐して以来その行為のたびにオーガズムにいたるという女性、さらに誰かが屈辱的