縁あって、栃木県宇都宮市に今年の春まで約三年間住んでいた。埼玉から栃木に引っ越したばかりの時、一番驚かされたのは「雷」の近さだった。「雷都」という呼び名は、落雷の多さばかりを言っているのではないと思う。栃木の雷は、体をすり抜けるように距離が近い。アパートのベランダのすぐ目の前に雷が落ちた。部屋が真白くなった直後、目の前の道路が爆発したような音が鳴った。その時は本当に死んだかと思った。栃木に暮らす前は、雷を遠くの街に落ちる小さな光の線としてしか認識したことがなかった。近年の異常気象ではないかとも思ったが、地元の古い家ほど庭に避雷針が立っていたことが印象深い。 「電球のような真空管は上部にかすかなオレンジの光が灯り、その周りに箱形や筒状のパーツが肩を寄せ合って、小さな都市を成している。真空管アンプは、ビル街に似ている。」 アンプの上に広がる世界は、『エレクトリック』の主人公・志賀達也が暮らす栃