1983年に東京大に入学し、世の中がバブル景気に浮かれる87年に大学院に進んだ。思うように論文が書けず、貧しい生活を送った当時の経験が、何かを手にしようと切実にあがく若者世代への共感につながっている。 * * そもそも若者世代は社会変化による不利益を被りやすい。年長者に比べて社会的な資源も位置付けも持たないからだ。特にバブル崩壊は、くっきりとした変化とそれに伴う不利益をもたらした。 例えば、90年代に現れたフリーターやニートの問題。ニートは、病気の療養や資格取得の準備をしていたとしても「いま働いていない」というだけでひとくくりにされ、「困った若者」と語られた。若者世代が「変わった」「劣化した」とのイメージが広がる一方、労働需要側・企業側の在り方は問われてこなかった。 実際、バブル崩壊後、企業の正規雇用は減り続け、非正規雇用が増え続けている。経済が膨らむ中では、それほど能力を見極めずに頭