「ふたつよいことさてないものよ」は、河合隼雄を代表する言葉といってもいいだろう。河合はどうやらこの言葉を気に入っていたようで、河合隼雄ファンの間でも印象的な言葉として知られている。 端的に言ってしまえば、禍福のバランスの話なのだが、そこにどのような世界観を見出すかがおもしろいところである。 私が親しんでいるエピソードに、塞翁が馬の話がある。「人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)」ということわざにもなっている。 もとは漢文で書かれたもので、塞(国境際の砦の町)に住む翁の話である。この翁は「術」をよくし、いろんなものを見通していたようである。そのためか、一見わざわいのように見えるものも、良いことにつながることもあるし、一見良いことのように見えるものも、わざわいに転じることもあることを、翁は知っていた。 このエピソードの肝をどこに見出すかもまたおもしろいところである。「禍が福に転じる
