日本におけるダークツーリズム研究の可能性 追手門学院大学 井出 明 はじめに 本稿では日本において十分には知られていない観光の新概念である“ダーク ツーリズム(dark tourism)”を紹介し、日本における適用の可能性について探る ことを眼目としている。その上で、幾つかの具体的なカテゴリーについて、ダ ークツーリズムの観点から観光の再検討を試みたい。 1.ダークツーリズムの考え方 tourism という言葉は、通常「観光」と訳される。観光という訳語を当てた場 合、その定義は「非日常性」と「非営利性」を持つとともに、一般的にはレジ ャーの一種として捉えられ、娯楽性のある楽しいものとして認識される。しか し、ダークツーリズムが意味するところは、レジャーや娯楽とは離れた対極に 位置していると言って良い。 ダークツーリズム(Dark tourism)なる概念は、1990 年代にグラスゴーカレ
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