子どものために――。そんな思いで起こした親の行動が、裏目に出ることがある。 息子の部屋の前にDVDを置いた父親がいた。そのDVDは、社長と社員が一丸となって経営危機を乗り越えるという感動の物語。働くことの素晴らしさを伝えようとした行動だった。 だが、息子は、「働け」という無言のプレッシャーと受け止めた。翌朝、子どもは、そのDVDを割って部屋の前に放置した。父子関係はしばらく断絶した。 家のインターネット回線の契約を解除した母親がいた。昼夜逆転の生活で、部屋でパソコンばかりしている息子の姿に、ネットがあるから働かないのだと考えたからだ。しかし、契約解除を知った息子は激怒し、母親との会話はなくなった。 息子はネットゲームにはまってはいたが、仕事探しや支援機関の情報もチェックし、気になった支援機関へ相談に出かけてもいた。母親は後にその機関を訪れ、息子が他人との関(かか)わりに強い不安を抱