↑kindle版 短編6本からなるのですが、1本目の「ありがとう西武大津店」の「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」という書き出しの成瀬の言葉から変で、かつ引き付けられました。 読み始めて分かったのが、これが一種のコロナ文学であること。なぜ成瀬が「この夏を西武に捧げる」、つまり閉店が決まった西武大津店からの生中継に毎日映ることを決意したかというと、理由の1つはコロナ禍で思うように作れなかった、夏の思い出作りにあったのです。 そして2本目の「膳所から来ました」は、同じく成瀬の「島崎、わたしはお 笑いの頂点を目指そうと思う」という言葉から始まり、成瀬の友人である島崎は、否応もなく成瀬と共にMー1グランプリに出場することになります。「わたしは成瀬あかり史を見届けたいだけで、成瀬あかり史に名を刻みたいわけではないのだ。最前列で見ている客をステージに上げようとするのはやめてほしい」という島崎