[はじめに(序)] 原作「ハイジ」はキリスト教文学として書かれた。 ただし、文学である性質上ほかの精神的背景も持っている。 原作者のヨハンナ・シュピリはゲーテの傾倒者であり、ルソーの自然主義にも影響されている。今回は「ハイジ」をキリスト教信仰という面からのみ扱う。 その意味では、文学としての全体像を文化的歴史的な面で詳細に扱っていない。 しかし、こと原作「ハイジ」にとってキリスト教信仰という精神的背景は他のあらゆる文化的歴史的背景にまさって作品の骨格をなしているのは間違いない。(ハイジはキリスト教文学である。) (1) 原作「ハイジ」の主なストーリー 物語の舞台は、19世紀中頃のスイスとドイツのフランクフルト。 生まれてすぐ両親を失ったハイジは、しばらく叔母に引き取られていたが、5歳の時、叔母の事情でアルプスの山の上で一人で暮らす祖父に引き取られて幸せに暮らしていた。 そのハイジが8歳の時