広瀬和生 氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が、“東京落語界に存在する「二大協会」について解説する。 * * * 落語協会と落語芸術協会(芸協)という東京落語界の「二大協会」のうち、五代目 古今亭今輔 や 春風亭柳昇 、 桂米丸 といった人気者を輩出した芸協は、伝統的に新作派の勢いが強く、テレビやラジオといったマスメディアでタレントとして名を売る「大衆派」が目立つ。 「昭和の名人」の一人に挙げられる三代目 桂三木助 が晩年に芸協から落語協会へ移籍したのも、そうした「協会の色の違い」が関係していただろう。 1960年代のテレビ演芸ブームに対する反動としての評論家による「本格古典落語」称揚の動きは、いつしか「新作派が強くタレント落語家が多い」芸協を、落語協会よりも一段低