ひと様からすれば馬鹿そのものであることを理解しつつ書くのだが、私は夫を世界で一番愛くるしいと思っている。うちには猫が一匹いて彼も素晴らしく愛くるしいのだが、僅差で夫の方が勝っている。 とはいえ私も客観性というものをすべて喪失したわけではないので、自分のこの感情は脳内で分泌されている何かがいい感じに働いた結果の錯覚であって、181cm85kgの胸板ぶあつく眉ふとくやたら色黒でババコンガにちょっぴり似ている中年男は、他人から見ればもしかすると愛くるしくないのかもしれないくらいのことには薄々気づいている。気付いてはいるが、だからといってこの錯覚が消えるわけではなく、相変わらず夫は狂おしいほどに愛くるしいのである。 時々私は感情のフタがぱかっと外れてしまい、 「なんて可愛いの! かわいいねえ、かわいいねえ」 などと半ば叫ぶようにしながら夫に駆け寄ったりしてしまう。そんなとき夫の顔に浮かぶ表情ははっ