以前はタブーだった「がん告知」は、いまや「常識」になった。しかしその急速すぎる動きに戸惑い、傷つき、苦しむ患者がいることも事実だ。 かつて千葉県がんセンター長を務め、『がん告知 患者の尊厳と医師の義務』(医学書院)の著書がある竜崇正・浦安ふじみクリニック院長がいう。 「どんな治療を受けるか選択する権利を守るために、可能な限り患者には真実を伝えなければならないと考えています。がん専門医である以上、私自身はほとんどの患者に“がんである”と伝えている。患者に施せる治療法があれば必ず告知する。患者と医師が一緒になってがんと闘っていくには、どこまで踏み込んで生と死について話していけるかが非常に重要だと考えるからです。 ただし“何でも、誰でも、すぐ告知していい”というわけではない。患者の精神状態、それまで構築してきた医師との人間関係の深さなどを考慮して慎重な判断をすべきです」 竜院長の慎重な言葉の背景