特集 1 ◆原発災害をめぐる科学者の社会的責任 ―科学と科学を超えるもの― 25 学術の動向 2012.5 1.正しく恐れる? 2011年3月11日の東日本大震災に引き続く 原発災害により、東日本の広範な地域に放射能 汚染が広がっている。このような状況で、放射 能汚染の影響を「正しく怖がろう」という言説 が盛んに流布されている。正しいことは良いこ とであるはずなので、 「正しく怖がろう」とい うスローガンには、一見何も問題がないかのよ うに見える。ところが、実際にはこのスローガ ンは多くの場合、放射能汚染を憂慮し対策を求 める市民に対して「放射能汚染を『過度に』気 にするのは間違っている」というメッセージと して用いられているようである。具体例を見て みよう。 「広報えどがわ」では、東京大学医学部附属 病院の中川恵一氏が「首都圏の空気中の放射線 量は、ほぼ平時に近い数値に戻っており、新た