狡酷の世界に身を窶す三十代。煽動と先導を主な手口に、世間様からゼニと感動を巻き上げる賤業に与する。漢詩と数学が好き。 おまえのために少し長い手紙を書く。 たまたま生まれた家が裕福だったおかげで、俺は金の苦労も知らずに育ったんだけど、その一方、親から与えられるモノや教育の価値に気付かない困ったガキだったと思う。親から与えられる助力のありがたさに気付いたのは、ありがちな堕落の果てに留年して、ついに実家からの援助が途絶えたときだった。たちまち赤貧に喘いだ俺は三食を黒糖パンで食いつなぐのも辛くなり、けれども心を入れ替えて苦学するのかと思いきや、超ヒモ理論を駆使したサバイバル術でさらに堕落を極める筋金入りのクズぶりだった。俺の身の上話をしても仕方がないので割愛するけど、こんな俺がおまえにかける言葉はおいそれとは見当たらない。どうすればいいのかな。 不肖の俺から言えるのは一点、たとえば経済的な豊かさは