ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんの対談。前編記事に続いて「君の名は。」について語り合います。 整合性とディティールの問題 飯田 『君の名は。』では、なんでこの相手とチェンジしたのか、なんでお互いの名前の記憶が薄れていくかの必然性が弱い。ふたりが好きになる理由もよくわからない。このあたりは新海誠らしいと思う。作劇によって、あるいはキャラクターの魅力を描いていくことによって、じゃなくて「シチュエーションしかない」のが新海脚本の特徴だからです。シチュエーションしかない、というのは『ほしのこえ』の「地球と宇宙に引き裂かれた恋人」だったら別にミカコとノボルじゃなくてもどこのカップルであっても悲しいわけです。これはドラマを書く才能でもなければキャラクターづくりのうまさでもない。 シチュエーション設定の妙です。新海さんは、そこはすごくうまい。 ただシチュエーションで泣かすの